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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 ジルの表情に少し恐怖が混じった。

 今の私を誰か撮ってくれないかしら……。動画配信出来たら世界の皆に私の悪女っぷりを披露できるのに。

 私は小さく息を吐いた。

「けどもし貴方が生きたいというなら私は全力で貴方を生かすわ。助けを求めるのなら駆けつけるし、貴方が生きる事を諦めない限り私は貴方を支え続けるわ。けど、甘えないで。貴方は生きている限り人と向き合わなければならない。戦うのは私じゃないわ。ジルが戦わなければならない」

「お前に僕の気持ちなんか分かるわけない」

 ジルの目が少し赤くなるのが分かる。

「さっきも言ったけど、私にはジルの気持ちなんか全く分からないわ。私は恵まれているからね」

「ならそんな勝手な事言うな!」

 怒りでなのか悔しさでなのか、ジルの目に涙が溜まっている。

「ねぇ、貴方賢いんでしょ?」

「は?」

「私、実力がある者が上に立つものだと思っているの」

「そんなのあんたら貴族がいるじゃねえか。俺が立てるわけないだろ」

 私の話を聞いていたのかしら。

 怒りがこみ上げてきたわ。

「ねぇ、ジル、結局生きたいの? 死にたいの?」

 私の質問にジルは黙り込む。

「答えなさい」

 私は圧力をかけるような目でジルを睨んだ。

 これが悪女になろうと思って日々鏡の前で練習していた睨みよ。

「死にてえわけねえじゃん。けどこの場所からどうやって外の世界に行くんだよ。俺がどんなに他の奴より賢くなっても、この村から出れるわけねえだろ」

 ジルの瞳から涙が溢れ出た。

「貴方、大きな翼を持ってるんでしょ。じゃあ、いつでも飛べるじゃない。何を恐れているの」

「飛んだら落とされるに決まってるだろ」

 ジルが嘲笑しながらそう言った。

「私が助けてあげるって言っているでしょ? 貴方が光のある場所に行きたいのなら私が必ず命を懸けてでも光ある舞台に立たせてあげるわ! 貴方のその大きな羽を誰にも折らせないように連れて行ってあげるわよ!」

 私は大声を上げてしまった。

 今のは悪女らしくなかったわ。さっきまで落ち着いて話せていたのに。

 ジルが目を丸くしながら私を見ている。目からは大粒の涙が滝のように流れていた。

「なんで……、そこまでするんだよ」

「言ったでしょ、私には貴方を生かしてしまった責任があるのよ」

 そう言うと、初めてジルが私に笑顔を向けてくれた。

 あら、笑うと案外可愛いじゃない。

 これってもう心を開いてくれたって事かしら。

 私、戦いに勝ったんだわ。

 ここでの悪女ポイントは決して慈悲で助けるなんて言わなかった事ね。


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― 新着の感想 ―
[一言] 作者様 自ら認めてますけど、 この娘の悪女の定義がズレてます。 今の所、才能溢れる少女で済んでますが これはもう ・・・ 時間の問題では ・・・ (苦笑)
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