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「え~~。じゃあ、話すよ。幼い頃から……」
フィン様は私達の反応に少し引き気味だったが、話し始めてくれた。
その瞬間だった、扉がガチャッと開き「お待たせ~~」とヘンリお兄様の声が部屋に響いた。
なんてタイミング!!
私は思わずヘンリお兄様の方を向きながら声を上げた。
「ヘンリお兄様!!」
ヘンリお兄様はいきなり私に名前を叫ばれたことに驚く。
「おおお? なんだ?」
「タイミング悪すぎです!!」
「登場して怒られるってことあるか? しかも、この二人は俺が呼んだのに……」
ごもっとも。だけど、登場するのは今じゃないのよ。
「ここで話は終了だね」
フィン様はまたニコッと天使のような笑みを浮かべる。
……はぁ。
私たち三人は思い切り肩を落とした。
「な、なんか、悪い」
事情を何も知らないヘンリお兄様は戸惑いながら私達に謝った。
「いえ、ヘンリお兄様が悪いわけではないんです。ただ、タイミングが……」
「……出直してこようか?」
「いや、大丈夫だよ」
ヘンリお兄様の言葉にフィン様が被せるように答えた。「それなら良かった」と言って、ヘンリお兄様は私たちの方へと近づく。
これからフィン様の恋愛事情を聞くときは、魔法で扉を厳重に閉めておこう。
「それで、俺たちに話ってなんだったんだ?」
カーティス様はヘンリお兄様の方へと視線を向ける。
「あ~~、まさか二人がアリシアと会っているとは思わなかったからなぁ」
ヘンリお兄様は少し話しづらそうにしている。
やっぱり私の話だったの!?
「やっぱりアリちゃんの話だったんだ~」
カーティス様が私の心の声を代弁してくれた。
「……なんですか?」
「それはな……」
「私に聞いてほしくないことですか?」
「まあ、アリシアにとって良い話ではないからな」
ヘンリお兄様ってば、素直に答え過ぎじゃない!?
私に聞いてほしくないことだったら、もっと濁せばいいのに……。嘘も方便。私の話じゃないって言ったら、私もこの部屋から出て行ったのに。
なんだか、ヘンリお兄様って外では自分のことを隠すのは上手いのに、身内相手だと下手よね。
「アリシア、失礼なこと考えているだろ」
ヘンリお兄様が私をじっと睨む。私は反射で「いえ」と口角を上げた。
「それで内容は?」
「……お前をもうラヴァール国へ行かせないようにしようと思っていた」
あら……。これは確かに私にとって良い話じゃないわね。
「何故です?」
私は冷静にヘンリお兄様に理由を尋ねた。