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……この声ってフィン様!?
私は声が聞こえた方向を反射的に振り向いた。
天使のような顔をしたフィン様と色気が半端ないカーティス様が私たちの方に近付いてくる。
どうしてこの二人なの。こんな朝早い時間にこの場所に来るなら、ヘンリお兄様とアランお兄様だと思うじゃない。
「何故お前らがここにいるんだ?」
アルバートお兄様が私の思っていたことを代弁してくれた。
この状況を不思議に思うのは私だけじゃないわよね。
カーティス様が眉間に皺を寄せながら、嫌そうに口を開いた。
「馬鹿ヘンリに朝から呼び出されたんだよ」
「僕はカーティスに言われて来たんだ。面倒だな~って思ったけど、面白そうだからいっかなって」
フィン様の腹の内が未だに掴めない。きっと、彼が一番厄介な人物かもしれない。
私の味方なのかどうかもハッキリ分からない。
ただ、今まで特に私に危害を加えてきたこともなかった。リズさんにべったりだったっていう記憶も特にない。
どちらかというと、彼の今までの言動は私サイドだったような気がする。
「……カーティス様とフィン様って仲良いわよね」
「確かに昔からここのセットはよく見る」
「まぁ、僕らはリズの魔法にかかっていない組だからね~。立場がずっと中立なんだよ」
フィン様がニコニコしながらそう言った。
本当に眩しい笑顔。……全国のショタコンがフィン様を推す理由が分かる。
「あ、でもカーティスは結構アリシアのこと好きだよね!」
明るい笑みを浮かべたままフィン様はそう付け足した。
カーティス様はどこか恥ずかしそうに「おい!」とフィンを睨む。
確かにカーティス様はいつも私を助けてくれていたような気がする。何か事が大きくなる前に、彼が間に入ってくれていたし……。
「けど、まさか国外追放されるとは思ってなかったよ。……それに、帰って来るとも思ってなかった」
フィン様は興味深そうに私をじっと見つめる。
五大貴族の令嬢が国外追放されるなんて考えられないものね。
確かに誘拐された時に人は殺しちゃっているけど、あれは正当防衛だから罪に問われないはずだし。
「アリちゃんにまた会えて嬉しいよ」
流石プレイボーイ。発する言葉がやっぱりチャラい。
「またその目! ちゃんと本音だよ」
カーティス様は少し声を上げる。
「それで、ヘンリはカーティスに何の用だったんだ?」
「それが教えてくれないんだよ。家に来たら言う、とだけ言われてさ~~。本当に人使いの荒い奴め!」
「ちゃんと来るあたり偉いな」
アルバートお兄様の言葉にカーティスは「まあね」と短く答える。
……ヘンリお兄様、カーティス様を家に呼んで一体何を考えているのかしら。
「フィンも一緒ってことは、そんなに内緒話でもなさそうだしな」
「……私絡みではなさそうだし。一体何の話があるのかしら」
「ん~~、アリシア絡みじゃないとは断定できないよ」
フィン様は明るい声でそう言った。




