表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
449/686

449

「……ああ、確かに言われてみれば『いいひと』には向いていないかもしれない」

 お兄様ってば、私のことちゃんと理解しているじゃない! 

 そうよ、良い子ちゃんになんて私はなれないの。そこはちゃんと押さえていてもらわなくちゃ。

 一呼吸置いた後、アルバートお兄様は「だが」と付け足した。

「厳しさの中にある優しさに気付かない者が多かっただけだ」

 なによ、それ……。

 確かに私は現実主義だし、国王様にリズさんの監視役を任された。

 けど、それは別に優しさなんかじゃないわ。私が私の為に行動したことだもの。

 今までの言動だって全てそうよ。私が悪女としてのポイントを稼ぐため。

 …………というか、今になって思ったのだけれど、リズさんの監視役ってまだ続いているのかしら?

 勝手に投げ出して国外追放されちゃったけれど……。

 でも、今のリズさんに監視役は要らないと思う。もう私がいなくても、彼女は大丈夫な気がする。

「私は自分勝手な女です」

 勘違いされては困るわ。

 厳しさの中にあるのはあくまで傲慢な心だけ。今までだって、これからもきっとそう。

「自分勝手な悪女は貧困村の住人にあそこまで愛されないよ」

「……ですが、私は貧困村を救ったわけではありません」

 これだけはハッキリしておかなければならない。

 私は正義のヒーローなんかじゃない。

 アルバートお兄様から目を逸らさず話を続けた。

「貧困村を救ったのはウィルおじさんやレベッカたちです。そして何よりもあの村を解放したデューク様が英雄です。私はただあの村の人たちに『生きる』というチャンスを与えただけ。彼らが自ら村の改革を望まなければ意味がない。機会を与えて、後は彼らに任せただけです」

 聖女なら、あの村をより良くしようと手を貸しているはず。

 ただ、私はそんなことを一切しなかった。ただ、村の情報を常に聞いていただけだ。

 利用できるものは全て利用しようと思っていた。その考えは今でも変わらない。

 弱き者は強き者に食われるのだ。

「…………それでも、村人はアリシアに感謝しているよ」

「どうしてですか?」

 私は思わず顔を顰めてしまった。

「アリシアは一番大事な『きっかけ』を与えたからね」

「きっかけ……?」 

「あの村を変えさせた最も大きな要因はアリだ。変化を起こすにはきっかけが最も重要だ。それが全てだと言っても過言ではない。きっかけがなければ何も始まらない。アリシアがきっかけを与えなければ、何も変化はなかっただろう。ウィル様やレベッカ、ネイトたち……、そしてデュークが動くこともなかった」

 私は黙ってアルバートお兄様の話を聞いた。

 何も言い返せない。確かに彼の言うとおりだ。けど、私のしたことなど「貧困村解放」という事象から考えれば大したことない。それもまた事実だ。

「きっと歴史に名を残すのはデューク様ですね」

 私がぼんやりとそう呟くと、お兄様は私に聞こえないぐらいの声で言葉を発した。

「……それはどうかな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ずっとこの悪女にこだわる姿勢が、何かの呪いにしか見えない。 (彼女と云う人格だけが、論理的な整合性を持たないため)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ