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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 目立たないように街は通らず、裏道を通っているのだろう。辺りがより一層暗く思える。

 ふと、空を見上げると遠くで何か明るい光が点々と増えている。星みたいだったが、星でないことは分かっている。

 思わず「綺麗」と声が出そうになってしまうぐらい、惹かれるものがあった。神秘的なその様子に私は目を凝らした。

 あっちは王宮の方……? 

「急ぐぞ」

 デューク様は少し緊迫した顔で馬をさらに速く走らせた。

 何が起こっているのか分からない私は、ただ馬に乗せられたまま王宮へと向かった。

 どんどんスピードを上げる馬に脅威を抱いた。こんなに長く速く走れる馬を私は他に知らない。

 上等なレア馬をクシャナは私たちに与えてくれたのだと改めて実感した。とんでもない速さで王宮の方へと走っている。宙に浮かんでいる白い光が大きくなってきた。

 遠くから見ても分かる温かな光。

 …………ああ、これはきっとウィルおじさんの死を悼む光なのね。

 ようやくこの美しい光の正体を近くで見て分かった。だから、デューク様は急ぎだしたのだろう。

 私は泣かないようにと、グッと下唇を噛んだ。

 久しぶりの再会だというのに……。

 あのクシャナが鍛錬だと言っていた花畑で出会ったウィルおじさんは幻影にすぎない。

 王宮の門が見えてくる。流石にデュルキス国の門は突破出来ないだろう。少しずつ馬のスピードが落ちていく。

 デューク様は門の横に立つ衛兵に顔を向けて「俺だ」と短く伝える。

 一瞬でデューク様だと判断した衛兵は慌てながら「おかえりなさいませ」と私たちを通してくれた。彼らに私の顔は見られていなかった気がする。

 衛兵たちもびっくりするわよね。だっていきなりデューク様が女の子を乗せてとてつもなく速く走る馬で戻ってくるのだもの。

 私だったら、本当にデューク様かどうか疑ってしまいそう。

 デューク様は門の中に入っても馬をずっと走らせた。風を切りながら王宮の中を駆け、王宮の裏の方へと行く。

 ……こんな場所知らないわ。

 きっと王族以外立ち入ることが禁止されている場所なのだと察する。丘になっており、その上には大きく立派な木が一本立っていた。

 あの木はこの世で一つだけしかないと言われているものだ。昔本で読んだことがある。マディより珍しい。

 まさか、デュルキス国の王宮にあったなんて……。

「あそこは俺の母が眠っている場所だ」

 デューク様は静かにそう言った。

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