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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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「旧図書室に凄い女の子来てるんだって!!」

「凄いらしいぞ!」

 授業が終わって暫くしたら急に騒がしくなった。

 バタバタと足音の振動を感じる。

 一体何事だ?

 廊下で叫んでいる声が教室全体に響く。

 ゲイルがあからさまに嫌な顔をする。

「どんな子なの?」

「黒髪の小さい女の子らしいよ!!」

 俺はすぐにアルバートの方を向いた。

 アルバートは目を少し見開いて小さな声で、まさか、と呟いた。

 デュークが真っ先に教室を出て旧図書室の方へ駆けて行った。

 俺達もデュークに続いて旧図書室の方へ向かった。

 旧図書室の小さな扉から溢れるくらい人が沢山いた。

「通してくれ」

 俺達はそう言いながら前へ進んでいった。

 他の生徒達は俺達を見た瞬間、道を作り通してくれた。

 俺達はそのまま旧図書室の奥へ進んでいった。

 視線の先には小さな女の子が椅子に乗り、せっせと黒板に文字を走らせている。

 周りにいる大量の生徒達を気にする事なく、書くことに集中している。凄い集中力だ。

 ……アリシア。

 俺達はその黒板を眺めた。誰も何も言葉を発する事無く、ただ黙って黒板を眺めた。

 何について書いているんだ?

 黒板の上に書いているお題を見た。

 黒板の上にあるお題はいつも色々な先生が全ての生徒に対し出しているものだ。

 誰でも自由に書くことが出来るが、その課題について書く者はほとんどいない。

『ラヴァール国を傘下に置く方法 誰でも自由に案を書いてよい』

 今回のお題……。

 僕は彼女が書いた黒板を上から順番に見ていった。

『目標 ラヴァール国を傘下に置く

 ラヴァール国→大国 独裁政治 周囲国から恐れられている

 周囲国→デュラン国 カルベラ国 メルビン国 コイル国 

 ラヴァール国の傘下→カルベラ国、メルビン国、コイル国

 デュラン国を買い取る 残りの三国をデュルキス国が支援→囲い込み戦

 周囲の国のラヴァール国への恨みを利用→ラヴァール国を孤立させる

 デュルキス国がラヴァール国を保護 ×他の国からのデュルキス国への反感

 →デュルキス国は他の国に恩を売る 

 例・デュラン国はあと数年で経済崩壊の可能性あり デュルキス国が買い取る

 溺れる者は藁をも掴む→デュルキス国が孤立したラヴァール国を支援 (嘘)

 デュルキス国がラヴァール国を保護し後に支配』

 アリシアは最後の文字を書き終えると、小さく息を吐いて周りを見渡した。

「え?」

 アリシアは目を丸くしながら覇気のない間抜けな声を上げた。

 まさか俺達に気付いてなかったのか?

「なんて集中力だ」

 ゲイルが眼鏡を光らせながらそう言った。

 殴り書きされた黒板をもう一度見た。

 ……これが本当に十歳の頭で考えた事なのか?

 自分の目を疑う。誰もが小さな女の子を前に固まった。

 この黒板に殴り書きされた意味は簡単に要約すると、ラヴァール国を嫌っている周囲国を利用してラヴァール国を孤立させ、そこに我が国があたかも助けるかのようにラヴァール国を保護するが、それは最終的にラヴァール国を支配下に置くという事になるという事だ。

 けど、何故デュラン国が経済崩壊する可能性があると思うんだ?

 今のところデュラン国は全く経済崩壊する恐れはなさそうだぞ?

 アリシアは少し怯えた顔でアルバートの方を見た。

 勝手に学校に侵入した事を怒られると思ったのだろう。

 しかし、アルバートは怒るより断然驚きの方が勝っていた。

 暫く俺達は静寂に包まれたまま黒板を眺め続けた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 全員がバカっぽい これはちょっと…
[良い点] 読みやすいです。どんどん読める。 [気になる点] 黒板の回答、10歳の女の子が書いたにしては凄い内容だけれど、主人公の中身の年齢から考えたら、めちゃくちゃ酷い内容だと思う。頭悪いなぁとしか…
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