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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 ウィルおじさんの後ろで浮かぶ巨大な魔法陣が輝きを放ち始めた。なんとしてもこの攻撃だけは避けなければ、という全細胞が私に訴えている。

 私は反射的に連ねた魔法陣に魔力を込め、いつでも防御できるように構えた。

 …………ウィルおじさんが望めばこの国を乗っ取ることなんて容易いことだろう。

「そうならないのは、彼が人格者だからかしら……」

 私は絶体絶命の状況でそんなことをぼんやりと考えていた。

 その一瞬の隙をついてか、今まで感じたことのない恐怖心に覆われた。一瞬にして大量の魔法陣が壊れた。残っているのはたったの五つだけ。

 この魔法陣でウィルおじさんの攻撃を受けきれるわけがない。ただ、さっきの魔法陣とは違い、今私が出した魔法陣は魔力を吸収できるようにしておいた。

 魔力を吸い取ることが出来るなんて無敵じゃない! って思うかもしれないけれど、そんな単純な話じゃない。

 これほどの魔力を吸収するのにはとてつもない体力を消耗をすることになる。更に、並外れた集中力が必要。

 魔法陣にひびが入り、壊れかけていく。あまりのウィルおじさんの魔力に手が震えてしまう。

 私は必死に歯を食いしばりながら、意識を集中させる。

 ……これぐらいのことが出来なければ、私は成長したなんて口が裂けても言えないわ。

 ウィルおじさん、成長した私の姿をその目に焼き付けて下さい。そうじゃないと、死んでも死にきれないでしょ。

 パリンッと魔法陣が割れる音が耳に響く。残ったのは三つの魔法陣だけ。

 一気に体に負荷をかけているせいか、鼻から血が流れてきたのが分かった。体中から力が抜けていくのが分かるが、今倒れるわけにはいかない。

「なんて強い精神だ」と目を見開いて、私を見つめているウィルおじさんが視界に入る。

 意識が朦朧としてくるが、それでも私は必死に耐えていた。


 気付けば、私は地面に倒れていた。目が上手く開かない。

 ……花畑で倒れている悪女なんて、なかなか絵になるんじゃない?

 甘い花の匂いが私を包み込む。ぼやけた景色の中で、私はウィルおじさんの方へ視線を向けた。

 もはや、立てる体力もない。それでも、私は戦える。体力はないが、私の体には膨大な魔力がみなぎってる。

「わしの魔力を吸収し、己のものにしよったか……」

 私の方へとゆっくり近付きながら、ウィルおじさんが口を開いた。

 魔力を相殺すれば良かったのだろうけど、それだと悔しいからウィルおじさんの魔力を自分のものにした。

 余計なことをしたせいで、その代償が今に響いているのだけれど……。まさかあそこまでの威力があるとは思わなかったんだもの。

「魔力があるとて、もう戦う体力は残っていないだろう」

「それはどうでしょう」

 私はこの状況でも余裕のある笑みを浮かべた。傍から見れば私は完全に敗北者に見えるだろう。

 ……この私がウィルおじさんの言われたことを活かさないわけないじゃない。狡猾になれたか分からないけれど、少なくとも頭を使って戦いに挑んだ。

 戦う前に一つだけ仕掛けておいた。

「どういうことだ?」とウィルおじさんは眉をひそめた。

「足元を、見てください」

 力を失い過ぎたせいか上手く声を発することが出来ない。ウィルおじさんはゆっくりと視線を下へと向けた。

 彼の足元には、紫と黄金が混じった神秘的な魔法陣があった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 待ってました!!!ありがとうございましす
[良い点] いつもありがとうございます。 とても面白くて、毎回、引き込まれています。 悪女が大好きになりました。 ウイルおじさんとの戦い、続きがとても気になります!
[一言] アリシアのことを大事にしてくれてるからこそのハメれる技か
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