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なんて動きやすいの!!
私は着替えた瞬間、その場でクルクルと回りながらこのドレスの動きやすさに感動する。
シーナは私の髪の毛を少し整えてくれて、この村に合うように髪を結んでくれた。右側の髪の毛を少し摘まみ、三つ編みして赤い刺繡の入った白いリボンで巻いてくれた。
「よく似合っているわ」
シーナは嬉しそうに私を見つめる。私は「ありがとう」と丁寧にお辞儀をした。
「……丁度いいタイミングね。クシャナがこっちに向かっているわ」
なんで分かるの!? やっぱり双子だから?
大声を出したい気持ちをグッと堪えて、冷静を装いながらシーナと共に扉の方へと歩く。
そう言えば、私は余所者だから民に嫌われるってクシャナは言っていたけれど……。シーナは私のことをあっさり受け入れてくれたのね。
やっぱり妹であり女王が決定したことだからかしら。
シーナに続いて外へと出る。目の前に広がる景色に思わず息を呑む。
雲一つない空に太陽が輝き、その下に青々とした茂みが広がっている。いくつもの木で出来た、恐らくこの民族の伝統的な家があり、子供たちが裸足で走り回っている。
遊牧民族のような雰囲気だけど、この場所でずっと昔から生活している様子が分かる。
まるで全く違う国に来た感覚になる。空気が澄んでいて、心地いい。
なんて美しい場所なの。あの森にこんな場所があったなんて……。
「とても素敵な所ね」
私の言葉にシーナは嬉しそうに頷く。
景色にうっとりしていると、目の前から威厳のある女性が歩いて来る。人々は彼女が歩む道を素早くあけていき、敬意をこめて頭を下げる。
……え、なに、このイケメン。
私は目を見開き彼女を見つめ、クシャナのカッコよさに固まってしまう。
腰ぐらいまである薄茶色の髪を編み込みにして、オールバックにしている。
前に戦っていた時は、お団子にして括っていたから分からなかったけれど、意外と髪の毛長かったのね。耳に着いている金の細長いピアスが揺れる。
割れてる腹筋が服の隙間から見えている。女性なのにワンピースは着ず、男性と同じズボンをはいている。女王だからか、衣装は他の者と違い随分と豪華だ。服には赤い刺繍だけでなく、金の刺繍も入っている。
クシャナの姿に惚れ惚れしてしまう。
最初に見た時は、お面を被り、大きな鎌を振り回す危ない大男だと思っていたのに……。
彼女が私の目の前に立つのと同時に、シーナは軽く頭を下げる。私もシーナと同じように急いで頭を下げた。
「調子はどうだ」
クシャナのハスキーな声と共に私もシーナも顔を上げた。
「体力も魔力も回復しました」
「そうか、それは良かった。神の花シャティについてだが……、お前が起きる前にカイに城に届けさせた」
そう言えば、着替える際に私のドレスにはもうマディの塊はなかった。
「……というか、カイって誰?」
「私の鷹だ。安心しろ、あいつならお前たちがこの森から城に帰るよりも早く着実に届けてくれる」
あら、それはちょっとカッコ良すぎない? 私の立場がなくなってしまうわ……。
「本当に良かったの?」と、私が聞く前にクシャナは口を開いた。
「その代わり、お前たちにやって欲しいことがある」