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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 無事学園に入る事はできたのだけれど……、この学園、大きすぎない?

 ここまで広くしなくても良かったんじゃない? 貴族だから贅沢しようと思ったのかしら。

 校舎に向かったはずなのに、どうして私は森に迷い込んでいるのよ。というか、どうして学園内に森があるのよ。

 ヒロインって会ったらこの子がヒロインだわって分かるのかしら。

 ゲームではヒロイン目線だったから、正直外見をよく知らない。

 ……私、まだヒロインと会った時の挨拶を考えていないわ!

 何か良い挨拶ないかしら。凄く意地悪な挨拶がいいわ。

 初対面でいきなり意地悪な事言うのっておかしいわよね? まず勝手にヒロインと接触していいのかしら。

「迷子なの?」

 ええ、そうなの、迷子……。

 私は声がした方へ振り返った。

「大丈夫?」

 声の主は甘く高い声を出して私の方へ近づいてくる。

 ……ヒロインオーラ半端ないわ。

 クリッとした愛らしいエメラルドグリーン色の目に私と同じ艶のある黒髪……。

 まさか私と髪の毛の色が一緒なんて。

 運営はどういう意図で悪役令嬢とヒロインを同じ髪の毛の色にしたのよ。

 ……でもまだヒロインって確定したわけじゃないわ。

「ねぇ、名前はなんて言うの?」

 子供扱い……。

 そりゃそうよね、私まだ十歳なんだもの。

 でも、十五歳もまだまだ子供じゃない。

「先に貴方が名乗るべきじゃなくて?」

 私がそう言うと、ヒロインかもしれない人が目を丸くした。

 心配して声をかけたのにこんな生意気な返しがくるなんて想像もしなかったのだろう。

「あ、ごめんなさい。私の名前はリズ。キャザー・リズよ。よろしくね」

 なんて人が良いのかしら。

 嫌な顔一つせずに教えてくれた。彼女といたら私の悪女っぷりがより引き立つ。

「私はウィリアムズ・アリシア。キャザー家なんて聞いた事ありませんわ」

「私、貴族じゃないの」

 これで確定したわ。キャザー・リズは間違いなくヒロインよ!

 ついに会えたわ。どんなに貴方に会いたかったことか。

「それでアリシアちゃんはどこに行きたいの?」

 アリシアちゃん…?

 馴れ馴れしいわね。身分をわきまえてほしいわ。

 って言いたいのだけど、残念なことに私は自分の力で貴族になったわけじゃないもの。

 自分の持っている力で平民なのに魔法学園の特待生に選ばれたリズさんには絶対に言えないわ。

「私は……」

 どこに行きたいって、今日の目標はもう果たせたのよね。

 だってヒロインのリズさんに会えたんだもの。

 後は侵入者として捕まるだけだわ。

 となると、やっぱり校舎に行った方がいいわよね。

 あの守衛らしき人がアルバートお兄様に妹が来ましたなんて連絡を入れていない事を願う。

 私の極悪侵入作戦が失敗に終わってしまう。

「校舎に行きたいですわ」

「ああ、それならこっちよ」

 リズさんは天使のような微笑みでそう言った。

 一般的には愛される笑顔なんだろうけど、私はこの笑顔が苦手だわ。

 ……あまりにも無垢過ぎるわ。

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