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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 ヴィクターとレオンは何も計画が浮かばないのか、難しい顔をしている。

 私は体をグッと上に伸ばす。ここまで来た反動で、疲れを感じている。

 かなり神経を集中させていたからかしら……。けど、今からが本番なのよね。

「疲れたか?」

「まさか」

 私は強気な態度を見せる。こんなところでヴィクターになめられるわけにはいかないもの。

 ……というか、ヴィクターもレオンも普通の人間じゃない。疲れるなんて単語使ったことなさそうだわ。

「主は何か考えがあるんですか?」

「何もないわ」

 堂々と答えて、レオンに微笑む。

 まさかそんな答えを想像していなかったのか、レオンは「え」と固まる。ヴィクターは「やっぱりな」と驚きもせずに呟く。

 まず、マディがどんな風に咲いているかなんて知らなかったもの。

 さっき魔法を使ってマディを取ろうとしたけど、取れなかったのよね。何か特別な力が働いているのかもしれない。

 やっぱりマディはそう簡単には取れないのね。魔法さえ使えれば楽勝だと思っていたけれど、マディ相手に魔法は役に立たないみたい。

 魔力を最大にして無理に取ろうとしたら、マディを傷つけてしまうかもしれないし……。

「どうすればいいんだよ」

 レオンはどこか焦ったように呟く。

 そりゃそうよね、弟の命がかかっているんだもの。

「誰かが下りるか?」

「毒の植物があるのに、手を突っ込むの?」

「そうするしかないだろ」

 ヴィクターは私を軽く睨む。

 何か早く案を考えないと……。これ以上、ここの空気が悪くなるのは良くない。こんな場所でバラバラになるなんて、死に近づいているのと同じこと。

 力を合わせるなんて柄じゃないけど、今はそうするしかない。

「私が行くわ。だから、さっきみたいに熊に襲われそうになったら食い止めて」

 覚悟を決めて、私は口を開いた。すぐにレオンが反応した。

「主が行くなら俺が先に行きます」

「私の方が勝算ある」

 少し強い口調になってしまう。レオンは何も言い返さない。冷たいかもしれないけど、レオンを先に行かせることなんて出来ない。

「それを言うなら、この中では俺が一番強いんじゃねえのか?」

 ヴィクターが口を挟んでくる。

 確かにそうかもしれないけど、私の方が小柄だし、魔法が使える。けど、何故かそれを言う気にはなれなかった。

「本当に強い人間は守られるべきなのよ。普段は何もしない。いざって時にだけ力を見せて下さい」

 私の言葉にヴィクターはフッと口角を上げる。

「……なんでそこまでして死に急ぐ? 命を削るのが趣味なのか?」

 馬鹿言わないで欲しいわ。私は悪女として歴史に名を残すまで死ねない。

「これが私のプライドなの」

「……なんのプライドだ? マディ採取が命を懸けるほどのことか? 俺ならプライドを捨ててでも命を取る。恥じない自分でいたい? かっこつけて命落とすなんてただの馬鹿だろ」

 ヴィクターはそう言って、私を見据える。レオンは何も言わず、私の方へと視線を移す。

 彼の言っていることは理解出来る。けど私とは、ものの見方が違う。

「私は、プライドを持たない自分に価値はないと思っているわ」

 ヴィクターから目を逸らすことなく、言葉を発した。

こんにちは! 大木戸いずみです。

いつも読んでくださり、本当にありがとうございます(;_:)

感想も全て楽しく読まさせていただいております。本当に嬉しいです(幸)


10月1日からコミックの『歴史に残る悪女になるぞ』二巻が発売されました!

本当に素敵な絵で、最高のコミックです。


これからもよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
僕も、誇りを持たない自分には、価値はないと思います。 アリシアと僕との考え方は似ているところがあるような気がするので、僕が全く考えも及ばぬようなこともアリシアから学ばせてもらっています。
[一言] コミックス2巻購入しました!! 何度も読み返そうと思います! 更新ありがとうございます♪
[一言] 初めて書く感想です!! 私は、去年大学受験だったのですが、色んなことが不安で、なかなか眠れなかった時、この作品に出会いました。信念を貫き続ける強くてかわいいアリシアが大好きになりました!!今…
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