369十二歳 ジル
ヘンリやデュークに助けられてから無理はしないようにした。
じっちゃんを救うためには僕が健康でいなければならない。僕が無理して何もできなくなったら本末転倒だ。
それに僕には、ヘンリやデューク、メルなどの最強の味方がいる。一人じゃないんだ。
僕は彼らにじっちゃんの病気の話を全て話した。吐血していたところを見てしまったことも。
彼らは驚いていたけど、すぐに真剣な表情になって、一緒に解決策を考えてくれた。
きっと皆も心の中で動揺して、ショックを受けているはずなのに、そんな表情を一切見せない。
僕はまだ子供だなと思ってしまった。
学園でのリズ派とアリシア派で争い揉めているのを鎮圧させるのは一旦置いておいて、僕らは四人で必死にじっちゃんの病気を治す解決策を探した。……だが、見つけられなかった。自力ではどうにもならない。
やはり、マディという薬草がないと助けられないみたいだった。マディの成分が分かれば、作れるかもしれないのだけど。
不幸中の幸いは、じっちゃんの斑点病の進行は遅いことだ。人によってさまざまだが、斑点病になって数週間で死ぬものもいれば数年生きる人もいる。けど、それは老若男女問わずバラバラなことで余命を判断するのは難しい。
子供でも早くに息を引き取る子もいれば、老人でも長くまで生きる人もいる。
学園の旧図書室に四人で集まる。学園内は前より一層騒がしくなっている。リズはあまり表に立たない方がいいということで、五大貴族やカーティスがこの騒動を抑えようとしてくれている。
僕らはそのおかげで斑点病について沢山調べることが出来る。
五大貴族の皆にはじっちゃんが斑点病だということは伝えていない。
「伯父の容態を確認した方がいいな」
デュークの言葉に皆が頷く。
「多分、じっちゃんは無理をしていると思う」
「斑点病なんてデュルキス国でなったら治らないって言われているもんな。……ってすまん」
失言したという表情で少し申し訳なさそうにヘンリは謝る。
ヘンリの言いたいことは分かる。斑点病はそれぐらいデュルキス国民にとって脅威的な病気だ。
僕らは暫く黙ったまま何か手掛かりを見つけるのに没頭した。
一時間ぐらい経った時に、いきなり、ドンッと扉が勢いよく開いた。僕はその音にビクッと体が驚く。
「デューク大変なんだ、来てくれ」
カーティスが息を切らして慌てた様子でそう言った。
僕らは急いで本を閉じて、旧図書室を出る。
何があったのかは分からないけど、いつも冷静なカーティスがあんなに取り乱しているのは珍しい。
誰か死んだのかな……。けど、いくら争いがあるからって人を殺めるなんてことはない。だって、ここは貴族が集まる学園だ。……あ、でも、昔、キャザー・リズの信者にアリシア誘拐されちゃったことあったよね。
何故かアリシアがいなくなってからこの国のバランスが崩れてしまった気がする。デュルキス国にとってアリシアはそれほど重要人物だったのかも。
そんなことを考えながら、僕らはカーティスに駆け足でついて行った。




