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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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 荷物をまとめて、小屋の方へと足を進める。

 空には雲一つなく、さっき昇り始めてた朝日に目を細める。朝の澄んだ空気を堪能する。

 本来なら令嬢はこんな天気のいい日はお茶会を楽しんでいるのよね。……私は今から第二王子と暗殺者と共にあるかどうか定かではないマディを探しに崖へと向かう。

 絶対後者の方が楽しそうじゃない! 私が今までしてきた選択に間違いはなかったようだわ。

「入るわよ」

 私は軽く小屋の扉を叩く。中から、ああ、という声が聞こえた。

 扉を開けて、小屋の中へと入る。

「早起きね」

「主の足音で目が覚めただけです」

 レオンは寝起きだと感じさせない様子でそう言った。

 嘘でしょ……。この年で気配を感じて目が覚めるなんて、一体どんな過酷な暗殺者人生を歩んできたのかしら。

 リオはまだライの上で気持ちよさそうに寝ている。そんな安眠を妨げるようにレオンはリオの肩を軽く叩く。

「リオ、起きろ」

 レオンの言葉にリオは「う、ううん」と目をゆっくりと開ける。眠たそうにあくびをするリオは年相応に見えた。

 レオンの精神年齢が高すぎるだけよね。ジルも精神年齢高いし……。リオを見ているとなんだか安心するわ。

「どうしたの、お兄ちゃん。……また逃げるの?」

 まだ完ぺきに開かない目をこすりながら、リオは起き上がる。

 また、か。逃げることなんて一回でも身体的にも精神的にもダメージが大きい。

「今回は逃げない。兄ちゃんはちょっとの間、留守にするけど一人で留守番できるか?」

 レオンの言葉にリオはコクッと深く頷く。

「頼れる人が君の面倒を見てくれる」

 私はいつものリアの口調に戻る。リオの前では男としておこう。

「感謝します」

 レオンは私に深く頭を下げた。

 頼れる人というのは勿論ヴィアンのこと。彼にはリオを安心して任せられるわ。

 この小屋に来る前にヴィアンの部屋の扉の下から手紙を入れておいた。小屋にいる少年の面倒をお願いしたいって内容で。斑点病にかかっていることも私が遠征に行くことも書いている。

 きっと、彼ならちゃんとリオのことを守ってくれるはず。

 ……マリウス隊長でも良かったのだけれど、ちょっと頼りないのよね。なんていうか、リオに無理矢理運動とかさせちゃいそうだし。

「すぐ戻って来る?」

「……分からない」

 レオンの返答にリオの表情はより一層寂しさが増す。

 唯一の肉親、大好きなお兄様と離れ離れになるなんて寂しいわよね。

「けど、必ず戻って来る」

「約束だからね」

「ああ、約束だ。だから、お前もここで頑張るんだ」

 分かった、とリオは元気よく答える。

 なんて素直な弟なのかしら。弟想いになるレオンの気持ちが分かるわ。こんな可愛らしい弟がいたら、私も溺愛しちゃいそうだもの。

 ジルは最初から素直じゃなかったし……。まぁ、そこが彼の良さでもあるし、可愛いところもあるんだけどね。

「じゃあ、行ってくる」

「うん、行ってらっしゃい!」

 リオは明るく振舞っているが、少し泣きそうだった。声の微かな震えと少し潤った瞳で分かる。

 聞き分けのいい子供……、そこに関してはレオンもそうだったのだろう。

 一番子供らしい時に我慢して、大人になるしかなかった。きっと、ジルもそうだったのだろう。

 私はそんなことを思いながら、レオンと共にその場から去った。

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