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僕らは校舎の方へと足を進めた。
これ以上、学園内を乱されては困る。ここは勉学に励む場所だ。馬鹿騒ぎをするなら他でやって欲しい。
校舎の中は想像よりも騒がしく、リズの理想論の素晴らしさについて演説している声が聞こえた。
この様子を見ている限り、まだキャザー・リズは教室に来ていないようだ。
「確かにリズ様は俺達を騙していたのかもしれない! だが、理想を追い求めてこそ、この世の中は良くなると信じている!」
この言葉に賛同する多くの声が聞こえる。
僕らはあえて彼らがいる方を避けて、静かそうな場所へと移動する。
確かに希望を捨てずに自分達の気持ちを鼓舞させることは大切なことだ。けど、僕がムカつくのは、何もしてこなかった人間があんな風に正義を振りかざしていることだ。
キャザー・リズやアリシアが先陣を切って声を上げるのは分かる。本人不在のところでガヤガヤと騒動を起こすのは間違っている。
この学園の人間がいかに愚かだということを自分達で証明しているみたいだ。
「賢き者は相手を攻撃する前に、解決策を探す。調和と威嚇を上手く融合させるんだ」
デュークは歩きながらそう呟いた。
「このままでは何も解決しないもんね」
僕がそう言った後に、「一難去ってまた一難だ~」とメルはため息をついた。
旧図書室はやはりこんな騒がしい中でも静寂に包まれていた。
僕らはこれからのことについて話し合う。
「どうしよっか~」
「手っ取り早くこの騒動を鎮圧させたいよね」
「皆、国外追放にしちゃう?」
「それだと、相手の国が可哀想だよ」
「けど、ラヴァール国に国外追放されたらアリアリに会えるんだよ!? それなら、私、アリアリ過激派集団に所属するのも悪くないかも!」
「……リズに手を貸してもらおう」
メルの言葉など無視するようにデュークは口を開く。それと同時に、旧図書室の扉が勢いよく開く音が響いた。
ヘンリかな? こんなに急いでどうしたんだろう。
僕は扉の方へと視線を移す。視界に入ってくるその光景に思わず固まる。
そこにはアルバート、ヘンリ、アラン、カーティス、フィン、エリック、ゲイルまでもがいた。そして、キャザー・リズも。
僕はふと思った。このデュルキス国という物語には二人の主人公がいるのではないかと。
前にキャザー・リズが物語の中心にいて、それが揺らぐことはないと思っていたけど、いつも僕達を動かしているのはアリシアだ。原動力はアリシアなんだ。
キャザー・リズの特別な能力や性質を考えると、彼女が軸であることは間違いないだろう。けど、 同時にウィリアムズ・アリシアも軸だ。
変わった五大貴族のメンバーを黙って見つめる。ゲイルも一晩かけてキャザー・リズの話を納得したのだろう。目の下にクマが出来ている。ゲイルは真面目で賢い。だからこそ、葛藤が生じたのだろう。
アランを見る限り、彼も洗脳が解けたように思える。昨日、キャザー・リズがウィリアムズ家まで行った甲斐があったようだ。……誘拐してごめんね。
フィンやカーティスはいつもと変わらないが、いつもより瞳に光が宿っている気がした。
キャザー・リズを含め、全員目つきが変わった。こんな表情をした彼らを見るのは初めてだ。
「戻って来た」
僕は見逃さなかった。デュークが口角を上げ、嬉しそうに彼らを見つめている瞬間を。




