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「何をしてるんだ?」
デュークのその冷たい声で、その場が一瞬にして凍りつく。彼が嫌悪感を露骨に彼らに向ける。
アリシア派がいるのは嬉しいんだけど、こんなことやられるのは不快だもんね。
デュークの様子に怯んだのか、彼らは急におどおどとし始める。さっきまでの威勢はどこに行ったんだ。
彼らの内の一人が口を開いた瞬間、校舎内で叫び声が聞こえた。
……今度は何!?
僕は校舎の方を振り向く。まるで静かな水族館が、いきなり騒がしい動物園になったみたいだ。
キャザー・リズに洗脳されていた方が、ある意味学園としてはまとまっていたのかもしれない。
「何が起こっているんだろう」
「その答えをメルが教えてあげよう!」
僕の呟きに、突然メルが姿を現す。
びっっっくりした。いつも急に目の前に現れるから心臓に悪い。
デュークは彼女の行動に慣れているのか、表情一つ変えない。……流石デューク。
「昨日のキャザー・リズ洗脳解除事件をきっかけに朝からずっとアリシア派とリズ派の派閥が見事に分かれて、学園が大混乱中です!」
キャザー・リズ洗脳解除事件って凄い名前だな。
メルはどこか嬉しそうに話を続けた。
「リズ派は圧倒的に少なくなっちゃったんだけど、それでもリズ様の理想論について行く! って心を決めた人間もいるんだよね。まぁ、そこまでは何となく起こりそうだな~って予想はしてたでしょ? ところが! まさかのアリアリ派過激派軍団が出来ちゃったんだよね~」
「どっちにも属さない人間が一番迷惑だな」
デュークの言葉に僕は頷く。
確かにただ魔法の勉強をしに来ている貴族からすれば過激派の集団なんて迷惑でしかない。
それに、リズ派とアリシア派が本格的に多くの人間を巻き込んで対立するのは面倒なことになる。
デュークはアリシア派といえどもデュルキス国の王子だ。ここは多くの生徒を危険に晒すことなく穏便に済ませたいはず……。
キャザー・リズの気持ちが整ったが、彼女の信者の心は乱れまくったって感じかな。
「そう言えば、アランは?」
「ちゃんと家にとどけたよ」
メルは誇らしげにピースサインを僕に向ける。
「じゃあ、まだキャザー・リズのことを想ってるの?」
「ん~、それはないんじゃないかな。リズはあの後、ウィリアムズ家に行ったみたいだし」
「何しに!?」
昨日はデュークの家にいて、キャザー・リズがウィリアムズ家に行ったことなんて知らなかった。
「謝罪しに行ったみたいだ」
デュークがメルの代わりに答えてくれる。
キャザー・リズがアリシアの家族に謝罪する理由なんて沢山ある。けど、アリシアはそれを望まないだろうけど。
それにもし彼女が、この中庭で騒いでいるアリシア親衛隊を見たら、相当ショックだろう。
僕らは余計なことをしてしまったのかと少し自分の中に疑問が浮かび上がる。
「ジルは何も心配するな」
僕の表情を読み取ったのか、デュークは僕の髪をくしゃくしゃっと撫でた。
嬉しさと同時に、自分に対しての悔しさが湧き上がってくる。
結局、僕はずっと自立出来ていない。常に誰かに守られているんだ。僕は未だに非力な少年だ。弱くて、じっちゃんを助けることなんて出来ない。
もっと賢くならないといけない。もっとアリシアやデュークに近付けるようにならないといけない。




