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「……え!?」
うっかり、おじい様に見惚れていたけど、今ちょっと信じられないことが聞こえたような……。
どうしておじい様が私のことに気付いているの?
いや、そんなことよりもおじい様ってレベル100だったの!?
私が固まっているのを面白そうにアルビーは見る。私は必死に状況を理解しようとする。今はラヴァール国の王家の歴史よりもこっちの方が重大だ。
「えっと、おじい様が私のことを気付いていらしていたの? ……どうして? いつ!?」
「確信はなかったが、私の魔力を気持ちよさそうに受け取っていたからな……」
魔力? そんなものをもらった記憶は…………、もしかしてあの死到林!
だから、あの日の朝はとっても体が軽かったのね。だって、皆が馬に乗っている中、私は必死に走っていたんだもの。
考えたら、その前日の夜に死にかけていたのに、あんなに動けるわけないわよね。
「アルビーは国外追放された人間を見極める役だ。一体デュルキス国からどんな人間が来ているのか気になるからな。まさか孫が来るとは思わなかったがな」
おじい様はそう言って、優しく微笑む。
こんな表情初めて見たわ……。やっぱり孫って特別なのかしら?
「その布をとってくれないか?」
私はおじい様の言葉にしたがって、目に巻いている布をとる。光がいきなり瞳に入ってきて少し眩しい。「その目は母親譲りか。彼女に似てとても綺麗だ」
世の中の祖父ってこんな言葉を孫に発するの? こんなのおじいさま愛好家が聞いたら鼻血出るわよ。
「誰かに目を与えたのかい?」
「おじい様もよく知っている方に」
私の言葉におじい様は少し考え、ハッと目を丸くする。
「ウィルか」
「はい」
私が満面の笑みを浮かべる。
「そうか。まだあの村でも生きていたか。ウィルはいたずらが好きで、私やケイト、マークは彼を弟のように可愛がったんだ」
おじい様は懐かしそうな表情を浮かべる。
皆の若い時を一度でいいから見てみたいわ。ウィルおじい様がいたずらをするところなんて想像できないもの。
「調子に乗ってたからこそ魔力も失ったんだがな」
おじい様、辛辣ね。
「……ということは、貧困村に行ったのか!?」
おじい様が急に大きな声を出す。大貴族の令嬢ならほとんど関わることがない貧困村。
確かに、あんなところへわざわざ足を運ぶなんて想像できないわよね。それも一人で。
「アーノルドは一体どんな育て方をしたんだ? 剣術や学力は置いておいて、その行動力と勇気は人から教わるものではない。……とんでもない孫を持ってしまったな」
「可愛い孫でしょ?」
「ああ、この上なく可愛い孫だ。……だからこそ、大切に育てないとな。今の魔法レベルは?」
「レベル92です」
ラヴァール国に来てから少しも成長していない。魔法の練習なんて出来ないし、そもそも本がない。
「歳は?」
「……十六歳。ウィリアムズ・アリシア。十歳で魔法を扱えるようになり特例で十三歳の時に魔法学園に入学。その二年後にラヴァール国を知る為に国外追放されました」
彼の聞きたいであろうことを一気に話した。




