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何がいるかしら……。
私は小さな鞄に包帯と塗り薬、綺麗な水の入った瓶に、アルバートお兄様から頂いたマカロンを詰め込んだ。
あとは、熱を下げる薬よね。町に行かないと……。
時計に目を向けると夜中の二時だった。
もうこんな時間なのね……。とりあえず今日は寝ましょ。私はそのままベッドに倒れた。
「アリシア様~」
ロゼッタの声が聞こえるわ。
朝っぱらから騒がしいわね。
「アリシア様~!」
いつもなら起こしにこないのに……。
私は軽く目を開けて時計を見た。
え、十時?
私は驚きで完璧に目が覚めた。
三年間寝坊なんてした事なかったのに……。
剣のお稽古も終わっているわ。もっと早くに起こしてくれても良かったじゃない。
これは自己責任だから他人を責めてはいけないわね。
私は急いで着替えてお金を持って家を飛び出した。
馬にまたがり手綱を握り、私は町に向かった。
植物屋さんの扉をゆっくり開けた。
ああ、やっぱり心地いいわ。新鮮で爽やかな空気を一生感じていたいわ。
「いらっしゃいませ~」
奥からポールさんが出てきた。ポールさんが出てきた瞬間、部屋全体が優しい空気になる。
「アリシア! どうしたんだい?」
ポールさんは私が一人で来たことに驚いているようだ。
「ジョザイアを頂きたいの」
「ジョザイア? 誰か熱があるのかい?」
……ポールさんってお兄様達と仲が良いのよね。
嘘をついたらばれてしまうわ。
私が黙っているとポールさんは優しく微笑んで、はい、とジョザイアの入った袋を渡してくれた。
「理由は聞かないでおくよ」
思わず固まってしまった。私は有難く袋を受け取った。
ポールさんって大人よね。それも本当に素敵な大人だわ。
貴族なのに植物屋開いているぐらいなんだもの。
「あの、お金は……」
「今回はいいよ。前にチャドを当てたご褒美だよ」
ポールさんはそう言って笑った。
今回は悪女として生きるけど、次に生まれ変わったらポールさんみたいな人を目指すわ。
「有難うございます」
私は深くお辞儀をして、ポールさんのお店を出た。