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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
326/710

326 十六歳 ウィリアムズ家長女 アリシア

「はぁ!? 今なんて?」

 朝から私の言葉が王宮中に響き渡ったと思う。自分でも驚くような声が出た。

 衝撃のあまり持っていた書類を全て床に落としてしまった。

 王子にこんな口のきき方をするなんて一瞬で首が飛ぶ。

 でも、今のヴィアンの言葉は全く予想出来なかったし、唐突過ぎる。

 あんなことを言われると誰だって大声を出したくなる。……私、ラヴァール国に来てから言葉遣いが悪くなったような気がするわ。

「聞こえなかったか? だから」

「聞こえてたけど信じられないの! 二度も言わなくていいわよ!」

「へぇ、動揺してかわいいな」

 ヴィアンはニヤニヤしながら私を見つめる。

 一体どういう思考回路しているのよ、この男。

「何がそんなに嫌なんだ? 皇帝の妻になれるんだぞ?」

「だから! それを言わないで!」

「変わってるなぁ」

 彼は不思議そうな表情をする。

 ……変わってるのは貴方よ! どこの誰か分からない人間をよく皇后にしようなんて思うわね。

 ラヴァール国に来たのはあくまで密偵であって、皇后になるなんて想像していない。私はいつかデュルキス国に帰らなければならない。

「まず、私のことが好きでもないのによくそんなこと言えますね」

 私は深呼吸をしてから、落ち着いて会話を始める。

 冷静になるのよ、アリシア。

「私は割とお前を気に入っているぞ」

「恋愛感情がないじゃないですか」

「結婚に恋愛なんて不要だ。そんなもんが出来るのは平民だけだ」

 確かに、王子ならそうよね……。

 恋愛結婚なんて出来ない。普通は親が決めた婚約に従うだけだもの。

 私の場合、デュルキス国で誰かに結婚を申し込まれることなんて絶対にない。悪名を轟かせている。……デューク様は別だけど。

「それに、お前は皇后の器だ」

 ヴィアンの言葉が分からず、思わず首を傾げる。

「皇后になれる資質を十分なほど持っている」

「私が? どうして!? 確かに皇后に悪女は多そうだけど……」

「何を言ってるんだ?」

 私の呟きにヴィアンは怪訝な表情を浮かべる。

「いえ、なにも」

 ……とりあえず、今は目の前の仕事に集中しよう。これ以上彼の言葉に付き合っていられない。

 私はその場に落ちた紙を拾い上げる。その時に、何か床の端の方で煌めいた何かを見つける。

 ん? あれは何だろう? もしかして硬貨かしら。

 私は煌めいている所へと足を進める。そして、ゆっくりとそれを掴み、手のひらで転がす。

 …………これって、口紅? 

「誰のものなんだろう」

 私はじっくりとその口紅を観察する。

 もしかして、ヴィアンの愛人!? 愛人の一人や二人いてもおかしくないものね。

「ねぇ、これって……」

 ヴィアンは「なんだ?」と振り向く。それと同時に私の手のひらにある口紅にハッと気づき、勢いよく奪い取った。

 浮気が見つかった人みたいな反応。ヴィアンにしては珍しく、焦っている様子が分かる。

 まぁ、さっき貴方が私に皇后になれなんて言ったところだもの。そりゃ、リップスティックなんて出てきたら動揺するわよね。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「はぁ!? 今なんて?」 > 朝から私の言葉が王宮中に響き渡ったと思う。自分でも驚くような声が出た。 > 衝撃のあまり持っていた書類を全て床に落としてしまった。 今話の始まりが、数…
[良い点] やっぱ入り込める作品はあっと言う間に読めますね〜。 更新約半年分有ったんだが…(笑) 母国側は大団円に向かっておりますが… ホント何時になったら帰れる事やらww
[一言] 女装趣味万歳!(そうでありますように) この趣味きっと受け入れちゃってガチ求婚とかされたら ニヨニヨしちゃう!
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