表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
318/710

318

 キャザー・リズに助けてもらわなくともアリシアは自力で帰ってくるだろう。

「メル」

「分かってるよ、主」

 デュークの言葉でメルはスッと姿を消した。久しぶりに彼女の口から主って言葉を聞いた気がする。

 僕らの作戦はシンプルだ。この無駄に広い生徒会室で実験を行う。必要なものはリズとエリックさえ揃っていればいい。

「何をするの? アリシアちゃんを助ける話じゃないの?」

 リズの言葉にヘンリは「悪いが、違う」と答える。

 エリックが動揺の表情を浮かべる。リズやエリック単体なら何とか呼び出せてもエリックとリズを共に呼び出すのは難しい。だから、今回、アリシアを利用させてもらった。

「どういうことだ?」

 エリックは顔をしかめる。

「リズ、お前は無意識にエリックに魔法を使っているんだ。それを解いて欲しい」

 エリックにデュークの声は聞こえていない。メルが魔法でデュークの声をエリックの耳に届かないようにしている。デュークの言葉でエリックが逆上したら大変だからね。

「……どういうこと? 私、エリックに魔法なんて使ってないわよ」

「エリックだけでなくこの学園の生徒ほとんどに」

「そんなのするわけないじゃない!」

 デュークが全て言い終える前にリズは叫ぶ。エリックは隣で何がどうなっているのか分からない顔をしている。

「リズ? どうしたんだ?」

 キャザー・リズはエリックの言葉など無視して、デュークに問い詰める。

「私が一体何の魔法を使ってるって言うの? 誰かを傷つけたりした?」

 悪気がないのが一番腹立たしい。そして、会話をするのが難しい。

 本当に悪意を持って魔法をかけてくれていた方が扱いやすかった。

 普段落ち着いているキャザー・リズがデュークの言葉でこんなにも心が乱される。だから、本人に直接このことを言わない策で今までやってきたけど……。やっぱり聖女の魔力は強力過ぎて対処しきれなかった。

「おい! 一体何がどうなってるんだ!?」

 エリックは僕達の方を見ながら声を荒げる。この実験には彼が必要不可欠だけど、今は黙って欲しい。

「暫く眠っててね~」

 どこからかメルの声が聞こえた。どうやら以心伝心したようだ。

 エリックはゆっくりと体勢を崩し、近くにあったソファにドサッと倒れる。気持ちよさそうに眠りについた。

 ……エリックを寝かせるってメルもとんでもない実力の持ち主だな。流石デュークの側近だけのことはある。

「エリック?」

 彼が倒れたのと同時にキャザー・リズは振り返る。

「大丈夫、少し休ませているだけだ」

 デュークがそう言うと、キャザー・リズは再びゆっくりとデュークの方に視線を向けた。

 その真剣で王子相手でも狼狽えることのないエメラルドグリーンの瞳から目が離せない。彼女もこんな目をするんだ……。

「……もう一度聞かせて、私は一体何の魔法を使っているの?」

 少しの沈黙があった後、デュークは口を開いた。

「魅惑の魔法だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 聖女がなぜ生まれたのかなどを?視点などで書いてください。 よろしくお願いします。
[一言] エリックに何してるかバラさないで(いや、記憶は残ってるから魅惑といても罪悪感MAXイベは読めるのか。はやくエリック懺悔せよ!死ぬほど後悔しろ!にいちゃんも然り!くそおおお腹立たしい!!)リズ…
[良い点] 直接言ったー!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ