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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 私はヴィアンの部屋を出るなり、全力疾走でヴィクターの元へと向かった。

「ちょっとどういうことですか!」 

 ノックもせずに思い切りヴィクターの部屋の扉を開ける。

 ヴィクターは驚いた表情も慌てた様子もなく、しれっとした顔で私の方を見ながら口を開いた。

「どういうことってお前が兄貴の世話係になったんだ」

「全然意味が分かりません。どういう因果関係で私が第一王子の世話係なんですか? 王子は第一王子を嫌っていたわよね?」

 勢いよく話したせいで、敬語じゃなくなってしまった。でも、ヴィクターはそんなことを気にも留めない。

「状況が変わったんだよ」

「いつどこでどんな風に状況が変わったのか教えて下さい。私には知る権利があると思います」

 ここで引いたら負けよ、アリシア。粘るのよ。

 ヴィクターは私の方をチラッと見た後、ため息をつく。

 ため息をつきたいのは私よ。彼のやっている行動が理解不能過ぎてついて行けない。

「ねぇ、ちゃんと説明して。私は何をすればいいのよ?」

「あいつが、あいつが急に王座を本気で狙ってきやがった」

 いきなり声を荒げてヴィクターはそう言った。彼は私を睨むように見つめて話を続ける。

「あいつは昔から全てにおいて優秀だった。誰もが次期国王は第一王子だと言っていたが、親父は俺にもチャンスをくれた。王位継承権は俺にもある。だから、あの遠征は俺にとって全てだった。それなのに、あいつが……。これまで兄貴は王座には全く興味のない顔をしていたんだ。だが、突然本格的に王座を狙い始めた。今朝親父にあの妖精を見せても反応が悪かった。問い詰めたら、全て教えてくれたよ。お前の兄貴が自分の価値を証明し始めてるってな」

 こんなにも一気に話すヴィクターは初めて見た。よっぽど興奮しているのだろう。

 とりあえず、彼の話を要約すると、国王にキイを見せても次期国王の座は貰えなかったってことよね。……期待させてそれは確かにムカつくわね。

 でも、あの様子のヴィアンが国王になりたがっているとは思えない。

「とりあえず、落ち着いて下さい。まぁ、王座もそう簡単に決定出来ないですし」

「簡単? お前、命懸けであそこに行ったのをもう忘れたのか?」

 彼の鋭い視線が私の方に向く。

 あら、余計怒らしてしまったわ。今は何も言わない方が良さそうね。

「とにかくお前はただあいつの弱みを探してくるだけでいい。いいな?」

 ……私がヴィクターのスパイだってこと、もうバレていると思うけど。

「承知しました」

 私は静かにそう言うと、その場を後にした。

 もう、兄弟喧嘩ならよそでしてほしいわ。お互い能力があるのなら、ラヴァール国は大きいんだし分割統治でいいじゃない。

 私はそんなことを思いながら廊下を歩いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] またまた、悪女の暗躍する機会が!?(笑)第一王子がどう関わってくるのか、楽しみです!
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