表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
31/634

31

 客間にお兄様達とゲイル様、カーティス様とデューク様がいた。

 学校が終わってから来たのかしら。

「こんばんは」

 私がそう言うと、アルバートお兄様が私の方に近づいてきた。

 私の目の前に立つと、マカロンが詰まった袋を私に差し出した。

 私の大好物のマカロンだわ!

「アリ、昨日は悪かった」

 申し訳なさそうにアルバートお兄様がそう言った。

「これ、私にくれるのですか?」

「ああ」

 アルバートお兄様はそう言って微笑んだ。

 私は、マカロンの袋を手にして、眺めた。なんて美味しそうなの。宝石みたいだわ。カラフルで見ているだけで心が躍るわ。

「有難うございます、アルバートお兄様」

 私は満面の笑みでそう言った。

 アルバートお兄様の顔も明るく輝いた。

 ゲームではアルバートお兄様は妹と関わりたがらないのにね。

 私の悪女っぷりがまだまだ足りないのね。

「アルバート様、国王陛下がいらっしゃいました」

 はい!?

 国王様がこのお屋敷に来たの? なんの用なのかしら。

 皆どうして驚いていないの。国王様よ。もしかして国王様が来る事を知っていたの?

 コンコンッと扉がゆっくり開いた。

 やっぱり国王様ってすごいオーラがあるわ。

 私は深くお辞儀をした。

 チラッと見ると、国王様の後ろに何人か人がいる。

 お偉い人達かしら? ……お父様もいるわ。

「頭を上げたまえ」

 国王様の低く威厳のある声が部屋に響く。

 目の前には国王様の隣に四人の人が並んでいた。

 やっぱり乙女ゲームね、皆美形……。前世もこんなに美形がいたら良かったのに。

 お父様と、彼らは確か……、ゲームで見た事あるのに忘れてしまったわ。

「こんばんは。私はエバンズ・ジョアンだ」

 国王様のすぐ隣にいた髪が薄い灰色の男性がそう言った。

 エバンズ? という事はゲイル様のお父様よね。

「私はスミス・ネヴィルです」

 その金色の髪ですぐにフィン様のお父様だという事が分かりました。

「ハドソン・デレクだ」

 やっぱり大きいのは遺伝なんですね。エリック様そっくりですわ。

 お父様は自己紹介しなかった。

 国の五大貴族が全員集合って何事?

 なにか事件があったのかしら。

「アリシア、君にいくつか聞きたい事がある」

 国王様が私を見ながらそう言った。

 ……私? 今から尋問が行われるの?

「君はこの国が好きか?」

 想像していた質問と全く違う事を聞かれたので、固まってしまった。

 愛国心が試されているの?

 好きです、って答えようとした瞬間、頭に貧困村が浮かんだ。

 でも正直に答えたら、私が貧困村に行っている事がばれるわ。

 私が黙っていると、国王様が口を開いた。

「なら、質問を変えよう。君はこの国のやり方に対してどう思う?」

 国王様が私に対して何を試そうとしているのか分からないわ。

 私まだ十歳の女の子なんですよ?

 とりあえず、思いつくまま答える。

「私はこの国の貴族に対しての優遇は嫌いです」

「優遇が嫌い?」

「はい。大嫌いです」

 訝しげに皆が私の方を見る。

「それは何故かね」

 ジョアン様が私を探るようにして聞いた。

「低能な人間が指揮を執る事になるからですわ」

 私がそう言った瞬間、全員の顔が曇った。

 皆の顔が曇ると自分が悪女らしい回答が出来たっていう自信になるのよね。

「我々を侮辱しているという事か?」

 ジョアン様が私を睨みながらそう言った。確かに十歳の子供にそんな事を言われると腹が立つのは分かるけど、そんなに睨まないで欲しいわ。普通の十歳児なら泣いてしまうわ。

「皆がそうだとは言っておりません。ですが、国のトップが一番賢いわけではないという事です」

「どういう事だ」

「つまり、貴族……、魔力が扱えるからという理由でトップになれた可能性があるという事です」

「我々に対する侮辱か?」

「いえ」

 私はついにジョアン様の威圧するような睨みに負けて黙った。

 流石国のトップだわ。威圧力が半端ないわ。

「続けたまえ」

 国王様がそう言った。ジョアン様が驚いた顔をなさった。

 そりゃ驚くわよね、自分達が侮辱されているのを続けさせるんだもの。

 私は軽く息を吸って姿勢を伸ばし、自分が一番綺麗だと思っている姿勢を作った。

「頭脳の面で考えると、貴族よりも賢い方は沢山います。私が言いたいのは魔法が使えるのと賢いというのは全く別だという事です。つまり、この国は実力主義ではないという事です」

「では、君は今の地位を剝奪されてもいいのか?」

 私の心を覗くように国王様の目が私に向けられた。

 私は自分の脈拍が上がっているのを感じた。

「私は幸運にもウィリアムズ家の長女として生まれたのであって、自分の力で貴族になったわけではありません。剝奪されても私は文句を言える立場ではありません」

 私の言葉に国王様は瞠目した。ジョアン様が私の方をじっと見る。

 さっきみたいに睨んでいるのではなく、品定めしているような目だ。

「アリシア、もう部屋に戻っていいぞ」

 お父様が私に微笑んでそう言ってくれた。

 この尋問は一体なんだったの?

 そう言いたかったけどとても言える雰囲気ではなかったのでやめておいた。

 私は深くお辞儀をし挨拶をして、部屋を出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] なんなんだこの尋問wwwww判らん ひょっとして以前の尋問の回答通りにしたらうまくいったとか? つか国の重鎮、フットワーク軽いな 普通用があったら呼びつけるよね
[気になる点] > ジョアン様が私を睨みながらそう言った。確かに十歳の子供にそんな事を言われると腹が立つのは分かるけど、そんなに睨まないで欲しいわ。普通の十歳児なら泣いてしまうわ。  普通の十歳児なら…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ