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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
304/710

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「リズの生まれた日にラヴァール国でそんなことがあったのか?」

 ヘンリは目を丸くする。

「本当かどうかは分からない。アリシアが聞いてきただけだ。俺もそんな情報聞いたことなかったし。だから、リズが不吉な存在だって言いたいだけなのかと……」

 アリシアはそんなしょうもない嘘を言うような人間じゃない。

 聖女が生まれたから、他国に膨大な被害が生じた、ってことかな。本当にリズは厄介な存在だ。

 何より無意識なのが一番厄介だ。

「調べてみる」

 ヘンリは即答する。

 え、ちょっと待って。僕達の本来の目的はアランを拉致することだよ!?

 いや、なんで僕が拉致賛成派になってるのか分からないけど。

「俺も調べてみる」

 アランの言葉に僕もヘンリも固まった。

「真実が何なのか知らないといけない」

 もしかして、もう洗脳が解けたの!? こんなにあっさり?

 魔力の強い五大貴族は洗脳を解くのが簡単なのかな。

「……何もなくてリズが正しいということを証明したい」

 全然解けてなかった!

 やっぱり人体実験の人選は間違ってなかったみたい。リズの魔力はやっぱり強力だな。

 けど、アリシアへの感情は少し穏やかになったような気もする。

 ヘンリが僕の方を見て、「ダメだこりゃ」と表情で語る。

 なんだろう。もっと深刻になった方が良いのに、ヘンリといると気が引き締まらない。

『早くして』

 僕は彼に向かって大きく口パクをする。

「よし! アラン、一緒に情報を探そう!」

 そう言って、思い切りアランをギュッと抱きしめた。それと同時にアランの体に力がなくなるのが分かる。ぶらんと手が下がっている。

 ……死んだ? 実験する前に殺しちゃったの?

 ヘンリはアランを支えるようにして、彼の両腕を自分の首に回し、背負う。

 僕の方にゆっくり近付いてくる。死体を担ぐ殺人犯にしか見えない。

「えっと、生きてるよね?」

「当たり前だろ。強力な睡眠薬を打っただけだ」

 ヘンリは即答する。

 言われてみれば、アランはヘンリの背中でスースーと寝息を立てながら気持ちよさそうに眠っている。

「良かった。……ん? 良かったのか?」

 本当に誘拐する時の手口じゃん。

「アランを無事にゲットできたしいいだろ」

 無事とは……。この家の人間は色々言葉の定義がおかしいんじゃないのか。

「天気の話するんじゃなかったの?」

「あ、そう言えばそうだった。アラン、今日の天気はどうだ? とっても素晴らしい天気だな!」

「めちゃくちゃ曇りだよ」

 僕は窓の外を眺めながら呟く。

 いくら強い睡眠薬と言えども、そんな陽気に声を出して寝ている人間に話しかけない方が良いと思うけど。

 僕はそんなことを思いながら、ヘンリの隣を歩いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 久々に読み進めております。 アランも相当に葛藤があったんすねー。 …そして監禁へ…(笑)
[良い点] 確かにジルの言う通り、この一族の人って(自らに対してを含めて)強硬手段が過ぎる気がします。 [気になる点] リズの誕生日に異常気象って、どういう事でしょうか。気になります。 [一言] 何か…
[一言] ジルのツッコミ…。ヘンリのボケ…。関西人かっ(笑)。 いよいよ、魔力での洗脳の解き方がわかってくるのかな???んー…目が放せません。
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