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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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「待て、どこに行くんだ?」

「どこって……。休暇を貰ったので、その分有意義に使おうかと」

 私を引き留めるヴィクターの方を振り向く。

 もしかして、交渉不成立? 私の中で勝手に成立してしまっていたわ。

「お前のその条件を飲んでやる。だから、マディの採取だけは他の奴らに任せろ」

 ヴィクターは真剣な瞳で私を見つめる。

 どうしてそこまで私にマディの花がある崖に行かせたくないのかしら。

「あの私、やっぱり自分の実力には自信があるんです」

「あ?」

 だからどうしてそこで不機嫌になるのよ。ヴィクターって本当に気分屋だわ。

「少し魔法が使えるからって自惚れているわけじゃない。自信が持てるくらい鍛錬してきたの」

「……それぐらいお前を見ていると嫌でも分かる。俺はただ……、とにかくあそこは危険なんだ。多くの命と引き換えにマディ一つを得ることが出来るんだ。斑点病で人が死ぬのと変わらないくらい、あっさりとマディを手に入れようとして死ぬ」

「崖に何があるんですか?」

「巨大な猛獣、猛毒を持つ花や虫、不安定な足場、一瞬でも油断すれば死ぬ」

 彼は声を低くしてそう言った。

 死到林っていう名前が見事に霞むじゃない。あの林の方が全然生きて帰ってこれるってことよね?

「私なら大丈夫。覚悟は出来ています」

「……そんな揺らぐことのない決意をした目を向けられたら何も言い返せない」

 彼は諦めたようにそう呟いた。

 やったわ! これであの厄介な伝染病を防ぐことが出来る!

 まぁ、まだマディを手に入れていないから喜ぶのは早いけれど。でも、必ず生きて手に入れてみせる。

「マディを取りに行く時は俺も行く」

 …………え? 今なんて?

 今の言葉を発したのってヴィクターよね? ヴィクターにそっくりな声の兵士とかじゃないわよね?

「空耳かしら」

 私は耳を軽く叩く。

 耳は良いはずだと思っていたのに、ついに幻聴が聞こえてしまったのかしら。

「俺もお前と行く」

 ヴィクターは私を指差しながら確実にそう言った。

「はあ!?」

「なんだその反応は。もっと喜べ。俺がついて行ってやるんだ」

 この王子は自分が言っている意味をちゃんと理解しているのかしら。幼稚園に子供を連れて行く保護者感覚で話さないで欲しいわ。

「えっと、危ない場所なんですよね?」

「ああ。とんでもなく」

「ラヴァール国の第二王子で間違いないですよね?」

「ああ。……何が言いたい?」

 彼は私の質問に顔をしかめる。

 顔をしかめたいのは私の方よ。どうして命を懸けたマディ採取の旅に一国の王子がついてくるのよ!

「何のメリットにもなりませんよ?」

 ヴィクターは自分の利益になることにしか動かないはずだ。

「私を利用した方が効率よくないですか?」

 私の言っていること、正しいわよね? 何も間違ったことは言っていないもの。

 それなのに……、どうしてこんなにも睨まれないといけないの!?

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― 新着の感想 ―
[一言] デューク「あーもうなんかあいつラヴァールで男作ってる気がするわー。 本人に自覚なくても絶対惚れられてるわ~。イライラするわ~」
[一言] そうだよねぇ…。止められないなら、一緒にいくよねぇ…。二人とも、けがしないようにね!
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