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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 家に帰るとフィン様、ゲイル様、カーティス様、デューク様が来ていた。

「どこに行っていたんだ?」

 アランお兄様が真っ先に尋ねてきた。

 ごめんなさい、アランお兄様を置いていくつもりはなかったのよ。

 そんなふてくされないで。

「町に行ってきたんだよ」

「しかも馬で」

 私の代わりにヘンリお兄様とエリック様が答えた。

 何故かしら、デューク様がエリック様とヘンリお兄様を睨んでいるわ。

「もしかしてアリちゃんと一緒に馬に乗ったの?」

 アリちゃん!? 初めてそんな呼ばれ方しましたわ。

 流石カーティス様、色男ね。

「違う、アリシアは一人で馬に乗ったよ」

 ヘンリお兄様は笑いながらそう答えた。

 するとデューク様の表情が少し柔らかくなった。

「僕もアリシアとデートしたかったな」

 フィン様が口を膨らませながらそう言った。

 全国のショタコンよ、この顔を見てください。きっと気絶するわ。

 というか、デートじゃないわよね。だって三人で行ったんだもの。

「アリちゃんは他に行きたい所とかないの?」

 カーティス様は私に向かってそう言った。

 なんだか女の子の扱いが慣れているような気がしますわ。

 私が他に行きたい所……。

「私、剣のレベルテストを受けに行きたいですわ」

 私がそう言うと、カーティス様でなくアルバートお兄様が答えた。

「それはだめだ」

 秒殺すぎません? ちょっとムカつきましたわ。

「お兄様達は行けてどうして私は行けないのですか?」

 アルバートお兄様は黙って少し考えてから言った。

「それはアリが女の子だからだ」

 ……なんですかその理由。あまりにも不公平過ぎだわ。

「女だからという理由で受けられないのはおかしいですわ」

「それでもダメなものはダメなんだ」

「嫌ですわ! それなら納得のいく理由を言って下さい」

 アルバートお兄様は黙り込む。

 さっきまでの空気が一瞬にして変わった。皆も黙り込んでいる。

 ピリピリした空気ってこういう事を言うのね。

 静まり返った部屋で私の声だけが響く。

「私は強くなるために剣術を習っているんですわ。自分が今どこの位置にいるのか知らなければいけないのです!」

「それでも許可できない」

「そんなのおかしいですわ!」

「アリシア!! いい加減にしろ!!」

 アルバートお兄様に生まれて初めて怒鳴られた。

 というよりアルバートお兄様が私に怒ったのが初めてだ。小さい頃からどんなに我儘を言っても笑っていてくれていたのに。

 私は自然と涙目になってしまった。

 しょうがないわよね、だって十歳の女の子なんだもの。怒鳴られたら泣きたくもなるわ。

 でもこれは悲しいって涙より、怒りの涙よ。

 どうして私だけがテストを受けにいってはダメなの?

 別に女の子はだめだってテストを受ける注意事項に書いていないでしょ?

 私が貴族の令嬢だから?

 理由が全く分からないわ。

「アリシア、怒鳴って悪かった」

 そう言ってアルバートお兄様が私の頭に手を置こうとした。

 その前に私はアルバートお兄様の手をはたいた。

 アルバートお兄様、私は悪女なのよ……。

 アルバートお兄様は目を見開いて固まった。

「私は納得しませんわ」

 目を決して逸らさずアルバートお兄様を見ながらそう言った。

 部屋の空気が張り詰めている。

 ……さっきまで本当に腹が立っていたのだけれど、だんだんおさまってきたわ。

 私、怒るのって長く続かないのよね。

 ダメって言われたのに対してむきになってしまっただけで、正直何を言っても受けさせてもらえないのは前から分かっていたのよね。まず絶対にお父様の許可が下りないからね。

 どうしましょ……。この空気感耐えられないわ。

 このまま怒った演技を続けるしかないわよね。

 私はそのまま黙って部屋を出て行った。

 部屋を出た瞬間に私は大きく息を吐いた。

 今日はとても疲れたわ……。早く寝ましょ。

 アルバートお兄様や皆に悪いけど、私は今満足感でいっぱいなのよ。

 だって今の完璧に悪役令嬢じゃない! お手本になれるレベルで凄かったと思うわ。

 私は軽くスキップしながら部屋に向かった。


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