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「いい男にはもういい女がいるんだよねぇ」
レベッカが小さく呟く。
本当にその通りだ。恋愛に限らず、良きリーダーには良き人材がついている。だからこそ、この世界で愚者となるのが恐ろしい。
……だから、もしキャザー・リズが賢者だった時、この国だけでなく世界の国が揺れ動いただろう。
キャザー・リズの力を利用できるのなら、存分に利用したい。それぐらい彼女も異質だ。
「俺達、愛国心とか全くねえから国に忠誠誓うとかねえけど……。でも、まぁ、あのお嬢には忠誠を誓っている」
お嬢はアリシアのことだ。ネイトがアリシアのことをこんなに信用してるなんて……。
彼女はどうしてこんなにも人を魅了する力があるんだろう。誇らしいと思うと同時に少し羨ましい。
僕が決して持っていない天性の素質だ。努力をしたからといって得られるものではない。
悪女になりたい彼女にとっては一番厄介なものだ。……アリシアも大変だね。
「だから、俺は彼女を裏切るようなことはしない」
ネイトは一点の曇りもない眼差しをデュークに向ける。
彼女のすばらしさを知っているのは自分だけで良かったのに、と少し寂しく思う。
ねぇ、アリシア。君はこんなにもいろんな人から愛されて、信頼されているんだよ。僕もアリシアが悪女になるの応援してるけど、君の理想の悪女と僕らにとっての悪女は随分と定義が違うんだよ。
絶対に彼女の前では口に出さないけどね。
「彼女は僕らのヒーローだからね」
僕は顔を綻ばせながらそう言った。
アリシアが聞いてたら、絶対に怒られるセリフナンバーワンだ。
「デュークも苦労するな」
「もうちょっと弱い女の子だったら良かったんですけどね」
じっちゃんの呟きにデュークは苦笑する。
「で、俺達は何をすればいいんだ?」
ネイトの質問にデュークは急に顔を引き締める。
「まずこの村から出た時に、暴動を起こさないと約束してくれ」
「分かった。もし何かあっても食い止める」
この中には勿論頭の狂った人達もいる。一気に野放しにするのは相当リスクがあるはずだ。
まぁ、ネイトが率いる隊なら簡単に抑え込めそうだけど……。
「まぁ、やべえ奴はもうすでに何人か目を付けてる」
「流石だな」
「これがその人たちのリストです」
ネイトとデュークの会話にレベッカが割り込む。そっとデュークに紙を手渡す。僕も隣でチラッと紙に目を向ける。そこまで人数は多くない。
「助かる」
「俺らも外の世界に行くにはそれなりの覚悟と準備が必要だからな。なんたって、この村での常識が外の世界での非常識だからな」
もうネイトは完全に敬語じゃなくなっている。
「私達はどこに住めばいいのですか?」
「街に場所を用意したが、栄えている所からはかなり離れている」
「有難うございます。離れているぐらいが丁度いいです」
「はみ出し者がいきなり出てくるんだ、歓迎されないのは目に見えている」
自嘲気味にネイトは答える。
「まぁ、あんたに協力するよ、王子様」
そう言って、ネイトはデュークに手を差し出す。デュークは彼の手を力強く握り返す。
「そう言えば、まだ名前を聞いてなかった」
「ネイトだ。この村にある唯一の隊を率いている隊長だ」
「隊なんてあるんだな」
「少し前に作ったんだ。この村を出て国に喧嘩を売る為にな」
「それを防げて良かった。お前を敵に回したくない」
デュークは口角を少し上げる。その様子を見て、ネイトも小さく呟いた。
「俺もあんたみたいなバケモノ級王子を敵にしたくねえよ」
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