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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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259/710

259 ジル十一歳

 ちょっとずつではあるが謎が解けてきている。

 国王と謁見したあの日、じっちゃんは国王と交渉をした。貧困村の村人達を解放することを受け入れさせた。

 彼らに反乱を起こさせない為にも、先にあの村から解放するべきだと言ったが、国王はなかなか首を縦に振らなかった。

 得体のしれない人間をいきなり解放したら、国王の命が危ない可能性は十分にある。実際僕も、村人全員を信用しているわけではない。

 彼らの中には国王の暗殺を企てている人間もいるかもしれない。

 だが、「全ての責任はわしがとる」という一言で国王はじっちゃんの要求を承認した。

 じっちゃんのその台詞はとても重く、誰も何も言い返せないほどの威圧があった。今まで見てきた彼とは全く違った。

 僕はチラリと横を見る。並々ならぬオーラを漂わせた人間が二人も立っている。彼らの存在に圧倒されそうだ。

 こんな薄汚い森の中の貧困村の入り口にどうしてこんな高貴な人間が二人もいるんだ。

 ここにいるのは息子の方だし。そりゃ国王がわざわざ貧困村に足を運ぶとは思っていなかったけど……。

「霧の壁の魔法を解くには国王の力が必要だって言ってたのに……」

「俺じゃ悪いか?」

 デュークは特に気分を害した様子もなく、僕の方に顔を向ける。

「いや、けど、何か、こんなに大きな国の変化を国王がしなくてもいいのかなって思っただけ」

「父より俺の方が魔力が強いからな」

 え、そうなの? と言いかけたが、やめておいた。

 考えてみれば確かにそうだ。デュークを普通の王子だと思っちゃだめだ。彼は超人だ。彼も異端児に入るだろう。

 彼はスッと霧の方に手を伸ばす。その瞬間、じっちゃんが口を開いた。

「待て、まだ解放しない方がいい。先に中に入ろう」

 じっちゃんの言葉にデュークは静かに頷く。

「ちょっと待って、僕、エイベル持ってきてないよ」

「わしのがある」

 そう言って、じっちゃんはポケットからピンク色の液体が入った瓶を取り出し、一口飲んだ後に僕に渡した。僕もじっちゃんに続き、エイベルを飲む。

「行こうか」

 先陣を切ってじっちゃんが霧を抜ける。デュークと僕も彼に続く。

 今日、何かが変わる。これからこの国を揺るがすかもしれない大きな出来事だ。その瞬間に僕が関わることが出来る。

 小さな恐怖と大きな興奮に包まれて、鼓動が速くなる。自然と体に力が入る。

「ちゃんと戻ってきたんだな」

 一番最初に僕らを迎えてくれたのはネイトだ。ニヤリと口角を上げて、僕達の方を見ている。そして、ゆっくりとデュークに視線を移す。

 その目は鋭く、敵を見るような目だ。デュークはそんな彼の様子に少しも怯むことなく堂々としている。

 初めて来る貧困村に一体どんな印象を抱いたんだろう。とんでもない所だと分かっているのに、ちょっとでも良く映ればな、なんて考えてしまう。 

 少なくともアリシアが一番最初にこの村に来た時よりかは随分と改善された。空気ももっと汚れていたし、皆の瞳も死んでいた。

「デュルキス国第一王子、シーカー・デュークだ」

 彼は真っ直ぐネイトを見つめる。異質な彼の雰囲気にネイトの顔が少し引きつる。

 きっと、また厄介な人間がやって来たと思っているんだろうな。しかも、第一王子って聞いたら、流石に後退ってしまう。

「さっきまでの威勢はどこに行ったのよ」

 レベッカがネイトの耳元で囁く。

 彼女はアリシアで貴族への対応が慣れたおかげか、王子相手に怯えた様子はない。

 それに、そもそもデュークは自分の権力を振りかざしにここに来たわけじゃない。

「うるせえな」

 ネイトが小さく舌打ちする。そんな様子をデュークは何も言わず黙って見ている。

 なんだか、自分の家族を友達に紹介するような気持ちだ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 年明け前に最新話読めて幸せです。更新していただきありがとうございます( ´∀`)/~~来年が著者さんにとって幸せな一年になりますように。
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