表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

257/710

257

 彼は少し間を置いた後に、フッと笑みを浮かべた。誰もがヴィクターの次の言葉を待っている。

「己の利益しか、考えない、貴方が、私を助ける理由が、分からない、わ」

 脳みそが溶けてしまいそうなぐらい頭が熱い。陸に上がったは良いけど、水中と変わらないぐらい息をするのがしんどい。

 人によって毒の効きはそれぞれって言ってたけど、本当かしら。私、自分で言うのもなんだけど、毒には強いと思っていたわ。

 そんな私を見つめながら、彼は私の額に手を置く。一体彼が何を考えているのか分からない。ヴィクターの手がひんやりとしていて、少し心地いい。

「己の利益を考えた時に、お前がこれからも使えると思ったからだ」

 ……あら、案外ちゃんと計算しながら私を助けたのね。まぁ、その方がヴィクターらしいと言えばヴィクターらしいわね。

「……って言えたらいいんだけどな」

 彼はどこか諦めたように私の隣で座っている。

 いつもと少し違う様子に皆が戸惑う。もしかして、彼も少し毒を飲んでしまって性格が変わってしまったのかしら。

 胸の奥底からこみ上げてくる気持ち悪さに耐え切れなくなり、私はその場で嘔吐した。何も口にしていなかったからか、出てきたのはほとんど水だった。

 彼は優しく私の背中を撫でてくれる。そこから感じる彼の手のぬくもりに、王子という立場はどこも大変だなと思う。

 デューク様には自由がなく王という地位に執着していない。ヴィクターは部下の命を犠牲にしてでも王になるという野望がある。

 体中が熱くなってきて、小さく呻き声を上げてしまう。こんな弱った姿見せたくないのに……。

 皆の心配する様子が空気で感じられる。おじい様が私の方へと近づいてくる。

 ヴィクターは私の額から手を離し、代わりにおじい様が私に触れる。視界がぼやけていて、彼がどんな表情をしているのかよく分からない。

 彼に触れられると、段々と体が楽になり、眠くなってきた。熱が下がってきている。

 自分に何をされているのか理解できていない。ぼんやりとしたまま私はスッと眠りに落ちた。


「何をしたんだ?」

 ヴィクターの言葉にアルベールは何も答えない。彼が人払いを求めているのだとヴィクターは察し、マリウス達にこの場から離れるように合図をする。

 マリウスとケレスはもう息が整っており、二人とも体を起こし、ニールと共にその場を離れる。

 それと共に、マークが軽く指を鳴らし幾何学模様の結界を張る。これから話す内容が外に漏れないようにするためだ。

「もうこいつの正体を知っているんだろ?」

 ヴィクターは黙っているアルベールにさらに質問をする。アルベールはゆっくりと口を開く。

「本来なら、あの程度の毒は小さな魔力でも消せるのだが……。よっぽど強い魔力を使ったのだろう」

 アルベールはアリシアの髪を優しく撫でながら静かにヴィクターの方を見つめる。全て見抜いているかのようなその瞳だ。 

 ヴィクターはその瞳に少し怯みながらも、アルベールを睨む。

「それで大丈夫なのか?」

「彼女の身体に魔力を注いだので」

『彼女の魔力一体どうなってるの? あんなのバケモノよ』

 彼らの会話にキイが乱入してくるが、ヴィクターは彼女の声は聞こえない。

 さっきまで隅の方にいたキイが羽を広げて、彼らの前に現れる。

「そう言えば、お前の存在を忘れてた」

『え、酷くない?』

 その会話にケイトが声を上げて笑う。

「これは傑作だな。湖の源を求めに来たのに、それを忘れるぐらいだとは……」

 そう言いつつ、アリシアの方に視線を向ける。妖精は小さくため息をついて、アルベールの顔の方に近付いていく。

『この子、一体どうなってるの?』

「わしに聞かれても分からない」

『え、だって貴方、この子の』

「この国に来る前には存在しなかった子だ」

 キイの言葉を遮るようにアルベールは言葉を被せる。彼は険しい表情を浮かべる。

『なんか、人間ってややこしいわね』

「もう話は済んだか?」

 この中ではヴィクターだけがキイの言っていることを理解出来ない。それに苛立っているのか、声が少し荒い。

『この王子は自分勝手ね』

「王子は強引ぐらいが丁度いい」

「一体何話してるんだよ」

 ヴィクターは顔をしかめる。そんな中、パチンと指が鳴る。マークが結界を解く。

「今日はもうそろそろ休んでください」

 マークの言葉にヴィクターは「分かった」と小さく呟く。結界が解かれたのを見て、マリウス達が駆け寄ってくる。

「あの殿下」

 ヴィクターの前に立ち、少し言い辛そうに話しかけるニールに「なんだ」とヴィクターは短く返す。

「リアって、女なんですか?」

 ニールの困惑した声が林に響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱり最高です! 久しぶりのアリシアちゃん吸収できて満足してます(*^^*) アリシアちゃんの悪女への強いあこがれがよく描かれていてとてもいいと思いました! [気になる点] 続きが気にな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ