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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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 キイが上へと向かっていくのと同時に、私達も必死にもがきながら上へと向かっていく。

 きっと今、私もヴィクターも相当苦しそうな表情をしているわ。悪女は常に余裕がないといけないのに……。

『もうすぐ』

 彼女のその声と共に、私達は水中から出て一気に空気を吸う。

「はぁはぁはぁ」

 息を切らしながらも、岩場のところまで向かう。

 もう体力なんて微塵も残っていないわ。ここから地上に帰れるのかしら。

「ここ、最初に来た場所か」

 呼吸を整えながらヴィクターは周りを見渡す。

 どうしてそんなに体力あるのよ。超人なの? もっと息を荒らして格好悪い姿を見せてくれてもいいのよ。

 今の状況把握をそんな瞬間的にしないで欲しいわ。自分がダメ人間に思えてくる。

『二人ともどんな心肺機能してるの。凄いね……』

 キイは目を見開きながら、私達の方を見る。

 そんな涼しい表情をした妖精さんに心肺機能褒められてもねぇ……。

 岩場に上がり、びっしょりと濡れた布を目に覆う。

 めちゃくちゃ気持ち悪いけど、しょうがないわよね。こればかりは我慢しないと。

「よく、それをまた巻こうと思えるな」

「やりたくてやっているわけじゃないわよ」

「アルベールにバレると困るもんな」

「彼には何も言わないでよ」

「いちいちそんな面倒くせえこと言わねえよ」

 ……意外ね。ヴィクターはこういう話を面白がると思ったのに。

 もしかして、私の為かしら? いや、彼はそんなに優しい男じゃないわ。

「まぁ、お前がアルベールのことを知りたい時はあの塔に行けばいつでも知れるぞ」

「塔?」

「上に行けない塔だよ。あそこ、魔法が使われているだろ? ……あそこ、アルベールの憩いの場だ。

俺でも行けない場所だが、ガキならいけるだろ?」

 なんだかもう全てヴィクターにバレているような気がするわ。

「行かないわよ。自ら爆弾に突っ込むようなことしないわ」

「……いや、お前は行くさ」

 予言されてしまったわ。こうなると、何としても行きたくなくなるんだけど、いつか行ってしまいそうな自分もいるのよね。

 ヴィクターの言ったとおりになるのは嫌だし、だからと言って、おじい様を知るチャンスを逃すのも嫌だし……。

 時の流れに身を任せましょ!

『誰か来るわよ』 

 私が勝手に自己完結している間に、さっき入った道から誰かの声が聞こえてきた。

 ……マリウス隊長とケレスの声かしら。来た道を戻って来れるなんて、羨ましい。

「ぁぁぁぁぁぁ」

 小さかったが、確かに聞こえた。

 ……これは叫び声だわ。

『あっちの道に行っちゃったのね』

「何それ」

『早く逃げた方が良いよ』

「何だって?」

 ヴィクターがキイの言ったことを確認するために私の方を見る。

「早く逃げろって」

「理由は」

「分からないけど、マリウス隊長とケレスの叫び声が聞こえるってことはかなりまずいんじゃないかな」

「まずいなら、もっと焦った調子で言え! てか、俺にはあいつらの声なんて聞こえなかったぞ」

「ぁぁぁああああ! 来るなあああ!」

 なんてタイミングが良いのかしら。今度はヴィクターの耳でもはっきりと聞こえるはずよ。

「一体どうなってるんだ、この湖は……」

「魔法が使われているんだから、何が起きても不思議じゃないわよ」

「どうしてお前はそんなに落ち着いてるんだよ。ここにまともな奴がいねえ」

 失礼ね。私は充分まともよ。

「王子~~! 早く逃げて下さい~~!」

 そう言ってケレスが物凄い形相で飛び出してきた。その後から、少し遅れてマリウス隊長も出てくる。

 マリウス隊長、よくあんなガタイでそんなスピードで走れますね。なんだかんだ言って隊長は凄いわね。

「なんだよ、あれ」

 ヴィクターの視線の先に私も目を向ける。

 ……何よ、あれ。大量の頭蓋骨が私達の方に向かって転がってくる。

 どうしていきなりホラーコメディー映画みたいな演出になってるのよ。あんな大量の頭蓋骨をよくこの中に収めていたわね。

 私はキイの方に目をやる。彼女は、片手を後頭部に置いて、てへっと舌を出す。

「早く逃げるぞ」

 ヴィクターが私の腕を掴み、そのまま毒の湖へとダイブした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 次の更新楽しみにしています。 完結まで応援してます。
[一言] 次のアッブを楽しみにお待ちしています。
[気になる点] 結局ジュルドは死んじゃった? [一言] 最初、200話超えで長いと思いましたが、展開が面白く、一気読みしてしまいました。 今後おじいちゃんとの対話や、その他楽しみがゴロゴロで、はやく続…
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