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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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「そんなことよりも早くここから出る方法を教えろ」

 ヴィクターの声に私はハッとする。もう胸元ぐらいまで水が侵略してきている。

『もうせっかちね』

「貴方がこの場所を作ったのなら、この水を止めることも出来るんじゃないの?」

『それ無理よ。もう完全に崩壊しちゃっているもの。修繕出来ない領域まできちゃっているわ』

 淡々とした調子で彼女は答える。

「なら、早く教えて。どこから脱出できるの?」

 妖精はまじまじと私を見つめる。

 何か変なことを言ったかしら? さっきから同じことばかり言っているだけなのに。

『……その前に一つ確認してもいい?』

「何?」

『どうして魔法を使わないの?』

 彼女の質問に私はチラッとヴィクターの方を見る。それだけで妖精は察してくれたようだ。

 魔力があることは知られても、魔法は使えないってことにしておきたい。……多分、無理だろうけど。それでも出来るだけ、彼の前では魔法を使いたくないわ。

『なるほどね。まぁ、別に使いたくないなら良いわよ。……君、名前は?』

「リア」

 念のため男装している時の名前で答える。

『私の名前はキイよ。よろしくね、リア』

 自己紹介を終えると、彼女は羽を動かして、ヴィクターの手から飛んだ。

 羽を自由自在に動かし、行きたいところへ行ける妖精を少し羨ましく思う。

『潜って』

 彼女はそう言って、水の中へ凄まじい勢いで入っていった。

「今度は何だ?」

「潜るわよ」

 私は大きく空気を体内に吸い込み、水の中へと体を沈めた。どうなっているのか理解できないままヴィクターも同様に水の中へ潜る。

 水の中で、キイは光を放っている。

 なんて神秘的なのかしら。もし私が画家だったら、間違いなくこの絵を描くわ。

『ついてきて』

 水中でもはっきりと聞こえる透明感のある彼女の声に反応して、彼女が行く方向へ体を動かす。

 泳ぐってとんでもなく体力を使うのよね。この任務が終えたら、甘いマカロンをたらふく食べたいわ。この国にもマカロンあるわよね?

 そんなことを考えながら、必死に体を動かし、置いて行かれないようにキイについていく。

 途中で先ほど外した目を覆う布を見つけて、それをしっかりと掴む。

 このがっつり目を出した状態で他の人達とあったら大変だもの。

『この水は毒がないから、吸い込んでも大丈夫よ』

 そんな誇らしげに言われても……。

 毒が無くても人間は水中で呼吸できないから、吸い込んでもしんどいことに変わりないわ。

 彼女は滝の裏側へと入り込み、私達も続く。そこには岩と岩で挟まれてはいるけど、小さな穴があった。

 多分、ここが出口なのよね。……キイは入れるかもしれないけど、私達はどう頑張っても無理よ。

 ヴィクターの方を振り向く。彼はどうしなければいけないのかを瞬時に理解し、岩の方へと近づく。

 そして、思い切り周りの岩を崩していく。水圧がかかりながらも必死に岩を掴み、取り除いていく。

 手伝いたいけど、二人で作業したらかえって邪魔になりそう。私とキイはただ見ていることしかできない。

『あ、開いた!!』

 ヴィクターが一つの大きな岩を崩した瞬間、一気に道が開いた。

 私達は必死にそっちの方へと泳いでいく。呼吸が出来ずかなり苦しい。

『こっち! 早く!』

 急かすようなキイの言葉に残りの体力を全て使いながら前へと進んでいく。今日だけで二キロぐらい落ちた気がする。

 ダイエットするなら死致林へ! っていう広告でも出来そうだわ。

 

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― 新着の感想 ―
潜って冷えた体にも七輪が・・。
[一言] 一昨日の夜読み始めたはずが気がつくと254話でした。 とても面白かったです。 続きが気になります。
[一言] 決死の脱出劇(笑)
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