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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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 マリウスとケレスは世間話をしながら、奥へと進んでいく。

「ヴィクター王子、随分とあのおチビを気に入ってますよね」

 ケレスの言葉に少し間をおいて、マリウスが答える。

「元々あいつは王に気に入られたんだ。そりゃ、王子も気に入るだろうな」

「不思議な少年っすよね。あの歳で怯えることなく、淡々と目の前のことをこなす。……一体どんな風に育ったらあんな子どもになるんっすかね」

「俺達が想像している以上の過酷な人生だろうよ」

「贅沢な貴族様の暮らしからは程遠い生活なんでしょうね~」

「その割には、あの城の中を見てもそんなに驚いた様子はなかったらしいけどな」

「適応能力が凄い動物みたいっすね」

 そんな話をしながら、彼らはある地点で足を止める。

 彼らの視界に下へと行く階段が入る。真っ暗で、目を凝らしても下に何があるか分からない。

「どうします?」

「行くしかないだろ」

 ケレスの言葉にマリウスは即答する。

 彼らは覚悟を決めた表情でゆっくり下へと降りて行った。


「何だ?」

 ヴィクターの声が聞こえたのと同時に思わず目を細める。

 急に視界が明るくなった。目が対応するまで少し時間がかかる。

 何この光。水の中なのに、光なんて……なんでもありじゃない。懐中電灯を向けられているような気分だわ。

「光の方に歩いていくしかないな」

 ヴィクターがそう言って、臆することなくどんどん前へと進んでいく。

 ここからもっと慎重になった方が良いのに……。本当に怖いもの知らずね。

 段々、道が狭まっていく。それに比例して光の強さが増していく。

 ……こっちの道がマリウス隊長達じゃなくて良かったわね。絶対に通れないわよ。

 人一人がなんとか通れる道を何とか抜け出す。視界には大きな滝が入ってきた。勢いよく水が流れ落ちている。大きな広場みたいな場所で、さっきより少し呼吸が楽になる。

 沢山の蔦や苔、小さな花までもが壁を覆っている。とても幻想的な場所で暫くの間見惚れてしまう。

 美しい廃墟図鑑とかに載ってそうな場所ね。あの汚らしい湖の中にこんな素敵な場所があるなんて一体誰が想像できるのかしら。

「何だ、あれ?」

 ヴィクターの視線の先に目を向ける。

 滝の真ん中に一か所水が流れていない場所がある。その部分だけを避けるようにして水が流れている。……何かがある。

 必死に目を凝らす。布で目を覆っているためか、やはり少しぼやけて見える。一つ分かったとすれば、人のような形をしているものだ。

 ……人形? あんな小さな人間いるわけないし。

 いきなりホラー要素を詰め込んでくるのやめて欲しいわ。せめて人間にして。……いや、でも滝の真ん中に太った中年男性が立っていても怖いわね。

「やっと見つけた」

 私の隣でヴィクターは小さくそう呟いた。

「あれが湖の源?」

「ああ。あの妖精が湖の源だ」

 確かな声で彼はそう言った。

 妖精? あれ、妖精なの? え、この世界に妖精なんていたの?

 初耳よ。あんなに本を読んでいたのに、妖精のことを知らなかったなんて恥ずかしい。もっと勉強しなくちゃ。

 何よりも、あれが人形じゃなくて良かったわ。

「で、あの妖精を獲得したら王になれるの?」

「そうだ。兄貴を超えられる」

「……第二王子のあがき?」

 怒るだろうと思ってわざと嫌なことを言った。

 男装してから、悪女発言を全くしてなかったから、ここは一つ悪女っぽいことを言っておかないとね。

「悪いか?」

 気分を害したのか、やや低い声でヴィクターは答える。

「第一王子は優秀なの?」

「知らねえよ、あんなやつ」

 私の質問を鬱陶しそうに答え、彼は滝の方へと足を進めていった。

 第一王子、あの闘技場で一度だけ見たことがある。ヴィクターと同じ金髪で長い髪の落ち着いた様子の男性。

 ヴィクターの態度を見る限り、彼は相当自分の兄について嫌いみたいね。私のところ同様、兄弟でも色々あるのね。

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ第2王子が王太子になりたきゃ実績積まなきゃねー。
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