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「何故アリシアの国外追放を止めなかったんですか!」
アルバートの声が部屋に響く。
確かにいくら王子がアリシアを国外追放にしたいと言おうと、国王がそれを拒否すれば出来ない。
国王の視線がゆっくりとデュークへと向けられる。
デュークは表情を崩さない。
……国王も扱いが大変な息子を持ったものだな。
でも、もうデュークは記憶喪失が嘘だったと皆に言っていいはずだ。無事にアリシアを国外追放に出来たのだから。
皆がデュークに注目し、彼は口を開ける。
「アリシアは密偵に近い。誰も知らない所で彼女は劇的に成長しこの国に変化をもたらしている。盲目的にリズを信じすぎるな。しっかり自分の頭で考えてみろ」
デュークの言葉にキャザー・リズは目を見開く。驚きとショックが混ざっているようだ。
そりゃそうか、好きな人にこんな風に言われるもんな。
「だ、だが、彼女の考えも正しい」
ゲイルが少し戸惑いながらも眼鏡をかけ直して、そう言った。
「皆で仲良く手を繋ぎ平和になりましょうってことを実現するには綺麗事ばかりじゃ無理だよ」
僕はキャザー・リズを見つめる。彼女は何も言わない。
ただ黙って僕らの話を聞いているだけだ。
「アリが、密偵……」
「それは僕も知らなかったな。……てか、デューク、記憶喪失じゃないのかよ」
アランに続き、カーティスが小さく苦笑してそう言った。
「令嬢を国外追放にするには何かしら理由がいるだろ」
あ~あ、デューク、後でアリシアに怒られても知らないよ。
これが仕組まれた国外追放なんてアリシアは絶対にバレたくなかっただろうに……。まぁ、この身内だけにバレても大丈夫か。
悪女に溺れた狂った王子だと言われたデュークの本性も策略家の王子だし。その悪女は実はこの国の英雄になりつつあるし。
この二人が次の王と王妃になるとか……、僕、この国で良かった。
「洗脳ってどうやったら解けるんだろう」
「なんか解けつつあるような気もするけどな」
僕の呟きに対して、デュークはアルバート達を見ながら答える。
言われてみれば、彼らの混乱した様子を見ていると、リズ宗教から脱退しつつあるように見える。
「……なんで今更そんなことばらしたの?」
フィンが笑顔でデュークに聞く。
「革命を起こすんだよ」
デュークがニッと口角を上げる。その顔に僕は恐怖を覚えた。
国王もまさかデュークがそんなことを考えていたのだと知らず、眉毛をピクリと動かし反応した。
「革命?」
「そうだ。この国は大国と言われている割には外交は下手だし、国内政治は欠陥だらけだ」
よく国王の前でそんな堂々と言えるな。
「じゃあ、僕らは何をすればいいの?」
「部隊を作る。その指揮官となれ。その為に剣術や学問に励んできたんだろう。貴族のまま一生充実しない日々を過ごしたいのならそれでも構わない。だが、自分の力で少しでも何か変えたいと思うなら俺に付け。そのチャンスを与えてやろう」
……デューク、国王より国王っぽいね。
「それは何かの争いに備えてってこと?」
「戦争はいけないわ!」
フィンとデュークの会話にキャザー・リズの覇気ある声が入る。
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