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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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「デュークがわしをどのように使うのか分からないが、わしは国王の下ではもう働かない。……あいつと話し合って、この国の未来について考えないとならん」

 真剣な目でじっちゃんはそう語る。

 話し合ったところで国王陛下にじっちゃんの声が届くのだろうか。

 母親の言いなりになってじっちゃんをこんな風にしたあの国王に今更何が出来る。

「エイベルを入手よりも……、あの霧の壁の魔法を解いて貰おうか」

「国王を説得できるの?」

「あいつの考えていることは大体分かるからな。なんとかしよう」

 僕の言葉にじっちゃんは即答する。

 じっちゃんがなんとかすると言ったら絶対になんとかなりそうな気がする。彼がいたら何も怖くない。

 デューク、じっちゃん、そしてアリシア、彼らが味方なら何も怖くない。世界を敵にまわしても勝てるような気がする。

「ジル、デュークに伝えてくれ、この村を出るのは一週間後だ」

「分かった。……でも、どうして?」

「まだ少しやるべきことが残っている」

「じゃあ、一週間後にまた来る」

 僕がそう言うと、じっちゃんは静かに頷く。そして、そのまま僕は貧困村をあとにした。

 

 学園の人気のない中庭でデュークとヘンリと僕が集まる。

「デューク、じっちゃんは村を出るよ」

「そうか」

 デュークはホッとした様子で少し嬉しそうにそう呟いた。

 彼はじっちゃんのことをずっと気に掛けていたことが分かる。

「……じっちゃんって誰だ?」

 ヘンリはそう言って首を傾げる。

 彼はずっとアリシアの味方だけど、僕達と彼との持っている情報の差は凄い。

 さっき、デュークが実は記憶喪失じゃないって言ったら、腰を抜かすぐらい驚いていたし……。

 デュークがアリシアに溺れていることなんて誰もが知っているから、自ら好きな女を国外追放にするなんて誰も思わない。

 つくづく彼には敵わないなと実感させられる。

「じっちゃんは貧困村のじっちゃんだよ」

「俺の伯父だな」

「……はい?」

 ヘンリは僕らの言葉に目を丸くする。どうやら理解が追い付いていないみたいだ。

「だから、貧困村の」

「ちょ、ちょっと待て。え? これは俺の脳が悪いのか?」

「元国王の嫡子、第一王子だ。俺の父親は妾の子だからな」

「俺、そんな情報全く知らない。つか、え? は? 貧困村? ん?」

 ヘンリが急に馬鹿になる。

「知っている人間はほとんどいないからな」

「待て待て待て、詳しく丁寧に教えろ。俺はお前らと違って普通の脳みそなんだ。今の俺はデュークが記憶喪失の演技をずっとしていたことに腰を抜かしたばっかりなんだ」

 片手で頭を抱えながらヘンリはそう言った。

 ……そりゃそうなるか。デュークは割と説明を省くからね。

 デュークは少し考えた後に、分かりやすく全部説明する。じっちゃんが貧困村に飛ばされた経緯を分かりやすく簡潔に話していく。

 デュークの話を聞いているうちに、ヘンリの顔色が変わるのが分かった。デュークは淡々と話すが、内容はかなり重い。 

「そんなことが……」

 全ての話を聞き終えると、ヘンリは特に何も言わずにただ静かに考え込んだ。

「今は昔の話に気を落としている場合じゃない。今、何をするか考えるぞ」

「あ、ああ、そうだな」

 ヘンリはまだ少し戸惑いながらもそう返事した。

「で、何を具体的にすればいいの?」

「伯父上はいつ頃、貧困村を出る?」

「一週間後」

「じゃあ、それまでにリズをどうにかしないとな」

「リズをつるし上げるのッ!? そういうの大好き!」

 突然甘い匂いと共に、ピンク頭の女が目の前に現れる。メルが嬉しそうに笑っている。

 ……本当にいきなり現れるな。

「聞いてくれる~? 私が主に頼まれていた件について」

 最後に少し声を落とし、真剣な目でメルはそう言った。

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