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秒でバレているじゃない、私。
もうちょっと男装楽しませて欲しいわ。
確かに一国の王子がこんなのに騙されるわけないわよね。もしこれで私を本当に男だと思ったらなかなかの鈍感王子に認定されたけど……。
割と上手く男装出来ているって思ってたのに。
「王子、何言っているんですか。こいつ、どっからどう見ても男ですよ。こんな女いな」
「うるせえ」
ヴィクターは一瞬で衛兵を黙らせる。
結構迫力ある王子ね。ただ、甘やかされてだらだらと育っただけじゃないみたい。
ラヴァール国って大国だもの、教育はしっかりしているはずだわ。
「目が見えないっていうのもますます怪しくなったな」
こういう時は何も言わないのが一番。
目の前でヴィクターからの物凄い圧を感じるけど、私は決して口を開かない。
暫く沈黙が続いた後、ヴィクターは静かにため息をつく。
「下がれ」
彼が衛兵に言ったってことは分かっていたけど、私も一緒にその場を離れようとする。
ヴィクターは危険だわ。早く私もここを去りたいのよ。
「お前は残れ」
ヴィクターは私の腕を掴む力を強くして、ガッと引っ張る。
衛兵は少し不服そうな表情を浮かべながらも、ヴィクターの言葉に従い、部屋から出て行った。
……なにこの展開。
ヴィクターは衛兵が完全に気配を消すのを確認した後、手を離した。そのまま、机に腰を掛ける。
私のことを見透かすようにじっと見る。
嫌いだわ、この目。自分のことを知られたくない人間に限って、探るのが上手い。
「女なんて余計面倒くさい」
もうバレているのなら、男の子のふりなんてする必要もないのだろうけど、念の為、続けておこうかしら。
「女にトラウマでもあるの?」
「……女にあんな動きされてみろ。その上そいつは目が見えるか見えないかは別にして、目隠ししてやがるんだ」
「男の立つ瀬無し」
「そういうことだ。それに親父ときたらお前のマナーをあいつらに任せようとか言い始める。……ああ、クッッソ面倒くせえ」
「あいつらって誰?」
「嫌でもそのうち会うことになる」
そんなに怖い人なの? ……それなら、是非会ってみたいわ!
怖さはしっかりと他人からも学ばないとね。悪女は人から恐れられる人だもの。
「お前、親父に気に入られることは想定内だっただろ?」
さっきより低い声でヴィクターはそう言う。
気に入られないといけないって気持ちはあったけど、気に入るか否かは国王様の感覚だ。
確信はなかったけど、一か八かのチャンスにかけたってところかしら。
勿論、相手に私の考えなんて読まれたら困るから口には出さないけどね。
「……何者だ?」
「貧しいガキのリア」
「面白くねえ答えだな」
彼は大きく舌打ちする。
逆になんて答えて欲しかったのよ。
「お前、臭いな」
女の子だと分かってて、そんなこと言うなんてデリカシーなさすぎない!?
嫌われるわよ。……まぁ、顔が良いから女には困らないんでしょうけど。
「脱げ」
ヴィクターの強い声が部屋に響いた。
いつも読んで下さり、本当に有難う御座います。
素敵な感想を頂けて、とても嬉しいです!
ざっとですが、この世界の地図を書きましたので、良ければ参考までに……。
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