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「ここで待っていろ」
朝、突然一人の衛兵が私の部屋に来てここまで案内をしてくれた。
ここがどこか分からないけど、この国の王宮がとてつもなく大きいことは分かった。
デュルキス国の王宮よりも大きいわよね……。一体どこにそんな資産があるのかしら。
とても頑丈そうな大きな扉の前で私はじっと待機する。
「なんで俺があんなガキのお守りしねえといけねえんだよ!」
この扉の意味は……無いわね。
がっつりと部屋の中の声が耳に響く。それと同時に衛兵の困った声も聞こえてくる。
「国王様が決定したことですから」
「あんの親父! 本当に自由過ぎだろ! なんであんなガキ拾ってきたんだよ」
「ですが、ヴィクター王子! 昨日のあの戦いをご覧になりましたよね? きっとあの少年は役に立ちます!」
あら、いいこと言ってくれるじゃない、衛兵。
私も自分で言うのもなんだけど、必ず良い戦力になると思うわよ。なんたって、国外追放されるぐらいの悪女のスキルがあるのだもの。……まぁ、あれはほとんどデューク様の力のおかげだけど。
「だから、厄介なんだよ」
……あら、もっと馬鹿で横柄な王子なのかと思ったけどそういうわけじゃないみたいね。
「どういうことですか?」
「考えてみろ、あんな戦闘能力があるのに闘技場なんかにいるような奴だぞ?」
この扉本当に意味あるのかしら。
会話が丸聞こえなの教えてあげた方が良い気がするわ。……それとも私の耳が人より良いのかしら。
耳の良さなんて他人と比べたことないから分からないのよね。
昨日も、遠い席の人が何を言っているか聞こえたし……やっぱり私目だけでなくて耳もいいよね?
「どうしますか?」
「めんどいが、親父の命令なら逆らえない」
「……通しますか?」
「ああ」
そう言い終わった後、すぐに目の前の扉がガチャリと開いた。衛兵があごをクイッとして私に中へ入れと合図する。
すっと背筋を伸ば……しちゃダメなんだったわ。ここでは令嬢じゃないもの。いつもの癖って怖いわね。
私はだるそうに部屋に入る。
短髪の王子の方ね。間近で見るとすっごい顔整ってる。
なんでここのイケメンって睫毛長い人間ばっかりなのよ! 前世キリンなの!? 女の子の立場なくなるじゃない。
もう、このゲームって本当……そういうとこよ! 何でも美形にすれば良いってもんじゃないわよ。確かに世の中の女子は皆面食いだけど、ここまで求めてないわよ!
「よう、ガキ」
椅子に座り、大きな机の上に足を乗せた男が私に圧力をかけるように言葉を発する。
彼の言葉で一気にさっきまでのイケメンへの怒りが収まる。
いきなり高圧的な態度ってわけね。上等だわ。




