表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
210/710

210

 どうしたらいいのかしら。

 私はライオンの方に目を向ける。今なら彼を殺せる。

 どうするのよ、私。何を迷っているの。今なら国王様に認められて、ここを抜け出すことが出来るかもしれないのよ。目的を忘れないで。

 自分をどんなに言い聞かせても、やはりライオンを殺そうという意欲が湧かない。

「あの、国王」

 私は国王の方を向き、大きな声を上げる。

「僕はライオンを殺せない。けど、ライオンも僕を殺せない。だから、引き分けということでもいいでしょうか?」

 周りがシンと静まり返る。

 血の気が引いた顔で衛兵が私の方へ走ってくる。「お前何言ってんだ!」と叫んでいる。

 彼らがあんなに怒っているということは、私は結局生き延びても支配人に半殺しにされるかもしれないわね。

「国王陛下になんて口きいてんだ、このクソガキ!」

「身の程知らずが!」

「ああ、もう、うっさいな!」

 野次に対して私は声を荒げる。

 王様は何も言わずにただ私を見つめている。衛兵もまさか私が怒鳴ると思わなかったのだろう。その場で固まる。

「このライオンを手当させて。僕が必ず従えてみせる。そして、仮にもし死なせてしまったら僕も死ぬ」

 どうして私ここまでこのライオンに入れ込んでいるのかしら。自分でも分からないわ。

 けど、ライオンを従えたら私は悪女としてさらにパワーアップするわ。そうよ、悪女がライオン一匹従えられないでどうするのよ。

「面白いな。良いぞ」

 あら、素敵な声ね。……って、ええ!? 今の国王様の声?

 国王様の方をじっと見つめる。楽しそうにニヤリと笑っているのが分かる。

 まぁ、私達は見世物だものね。王族が楽しめればそれでいい。それが存在価値だもの。

 私がいた入り口の柵の奥から支配人がいるのが視界に入る。

 物凄い形相で私を睨んでいる。思わず背筋が凍る。

 ……子ども相手になんて表情してるのよ。まぁ、確かに私に無茶苦茶にされているものね。

「お前、名前はなんていうんだ?」

「リア」

「リアか、気に入った。俺の元へ来い」

 観衆たちが一気に色々な声を上げる。「陛下考え直してください」と部下が言った声も耳に響く。

 ……やったわ。国王に近付けるチャンスがついに到来!

 でも、彼の元へ行くっていっても、護衛なんて絶対に就かせていただけないだろうし……。

 滅茶苦茶こき使われるのかしら。それに、住む場所も馬小屋なんでしょうね。

「あ、っと、ライオンも一緒だよな?」

「勿論だ」

 有難うございますって言いそうになったわ。私は今、礼儀を知らない子どもなのよ。

 ついつい設定を忘れそうになるわ。

「今すぐ出る準備をしろ」

「いつでも出れる」

「持ち物はないのか?」

「ここにいたガキが何か持ってるとでも?」

「おい! 言葉遣いに気をつけろ!」

「いや、いい。マナーはあいつらに叩き込ませる」

 彼の側にいた衛兵が大きな声で私に怒鳴ったのを、国王は余裕のある顔で止める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >有難うございますって言いそうになったわ。 >私は今、礼儀を知らない子どもなのよ ちょっと待ってくれ。国王に対する第一声が、 「だから、引き分けということでもいいでしょうか?」と、 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ