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「これからどうなるんだろう」
僕は窓の外に目を向ける。あの馬鹿な聖女のせいでこの国はおかしくなりかけている。
彼女が、何か特別なフェロモンを出しているようにしか思えない。
……もしそうなら何故僕やデュークは平気なのだろう。あまりにもアリシアを好きだから?
アリシアを含め、デュークは賢い。そんな彼らがいつまでもこの国に留まるとは思えない。王子と言えども、デュークはいつか自国を捨てるような気がする。
「ジル、俺らでこの国を立て直すぞ」
突然の言葉に僕は彼の方を振り向いた。
え? 今、なんて言った? 俺ら? ……僕も含まれるの?
その真剣な青い瞳に吸い込まれそうになる。女は全員この瞳に弱いのか。
「本気なの?」
「勿論」
そう言って、彼はにやりと笑う。その顔にゾクッと全身が疼く。
「これ以上、貴族をかき回したら怒られるよ」
「誰に?」
「……国王とか」
「是非怒らせたいな」
「マゾなの?」
僕の言葉にデュークは顔をしかめる。
「父は別に馬鹿じゃない。父も父なりに考えがあるのだろう。父みたいな王はこの世界にはごまんといる」
「どういうこと?」
「この国の情勢が別に特別じゃないってことだ。この国より貧富の格差が酷い国なんて沢山ある」
「低い所と比べても意味ないよ」
「そうだ。だから、より良くするんだ」
デュークはきっと良い王になるだろう、僕はその時の彼の表情を見ながら確信した。
決して逃げず、問題に向き合うその姿勢はアリシアを思い出させる。
……僕達がそれなりに優秀だから、国王を無能に思うのだろう。冷酷な王、狂った王、慈悲深い王、色々な王が世界には沢山いる。会ったことはないが、本で読んだ情報だとそうだ。
そう思うと、この国の王が暴君じゃないだけましかもしれない。
ただ、僕らを貧困村に閉じ込めたのはやっぱり許せない。危険人物を閉じ込めておかなければならないのは仕方がないと思うが、あんなやり方はやはり間違っていると思う。
「王子が僕を必要としてくれるなんて光栄だね」
そう言うと、彼は「当たり前だろう」という表情を僕に向けた。
僕にはそれがとてつもなく嬉しかった。アリシアが与えてくれた僕の場所はこんなにも価値あるものなのかと改めて実感する。
「アリシアがラヴァール国で戦っている時に、僕たちが何もしないわけにはいかないもんね」
「ああ」
デュークは優しく僕に微笑んで、頭を撫でた。
子供扱いされるのは嫌いだ。けど、彼に頭を撫でられるのは少しも不快ではない。むしろ心が温かくなる。
「まず何するの?」
「伯父を連れ戻す」
僕の質問にデュークは即答した。
更新、大変お待たせいたしました。
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コロナの話ばかりが続き、大変な世の中になっていますが、少しでも皆に楽しんでいただけたらと、毎日更新していこうかと思っております。
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