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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 昼までの間、筋トレとストレッチをして体をほぐしてから精神を落ち着けることに集中した。

 闘技場の観客席に人が入ってくるのが分かる。どんどんと騒がしくなっていく。

 人が死ぬかもしれないのに、こんなにも熱気に溢れているのね。隣国だというのに、文化がこんなにも違うのね。

「時間だ」

 衛兵の声が牢に響いた。

 なんだか死刑囚が死刑執行されるような気分ね。私は全く死ぬつもりないのに、衛兵がそういう雰囲気を醸し出すんだもの。

 衛兵が扉を開けて、私に外に出るように合図する。ふぅ、と小さく息を吐いて、牢から出た。廊下にコツコツと私達の足音が鳴り響く。

「馬鹿だな、お前みたいな子供が早死にを選ぶなんて」

 衛兵が突然口を開いた。私に同情してくれているのか、私を憐れんだ様子で見つめている。

 ……良い人なのかしら? 安心して、この道を歩みたくて自分で選んだ道をただ楽しみながら歩んでいるだけだから。

「僕ぐらいの歳の子が見世物になるのは珍しい?」

「……そうだな。基本、成人男性が出場する。子供はそれまで雑用だ」

「なるほどね」

 成人になるまでこんなところでずっと過ごすなんて絶対に無理よ。

 入口に近づけば近づくほど、活気が溢れてくる。まだ何も始まっていないのに歓声が凄いわ。

「幸運を祈っている」

「有難う」

 もっと罪人には当たりが強いのだと思っていたのだけれど、案外優しいのね。私が子どもだからかしら。自分の子どもと重ねて見えるとか?

 入口には柵があり、どうやら始まりと一緒にこの柵が上に上がる仕組みのようだ。観客席は私達を見下ろす形で設計されている。

 古代ローマの闘技場みたいね。……それをモデルとして造られたのかしら。

「良いもの見せてくれよ~!!」

「今日の見世物は一体どんな奴だろうな!」

「ライオンと戦うんだろう? きっとガタイの良い奴に決まっている!」

 上からそんな声がどんどん聞こえる。

 というか、今更なんだけど、他国で文化も違うのにどうして言語は一緒なのかしら。やっぱり乙女ゲームだから? 

 まぁ、そっちの方が断然良いのだけれど。言語が統一化されているとコミュニケーションが取りやすいもの。けど、一応色々な国の古語は話せるのよね。昔、本で読んだ時に覚えたわ。

 そんなことを考えていると、ゆっくりと柵が上がっていった。それと同時に歓声も大きくなる。

 私は壁に掛かっていた小さな剣を取り、腰に差した。

 大きな剣の方が攻撃力は高いけれど、動くとなれば邪魔になるのよね。……こんな小さな剣で飢えたライオン様に太刀打ちできる気もしないけど、仕方ないわ。

 緊張しているはずなのに、このうるさい歓声で私の心臓の音はかき消されてしまう。

 柵が上がりきり、私は闘技場へと足を踏み出した。

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