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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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「本当に代わりたいのか?」

 ミルは疑わし気な表情を浮かべる。

「代われるのなら今すぐにでも代わりたいよ」

「君は……、まだ若い。やめておくんだ」

 さっきまでの敵意は一体どこへいったのかしら。国外追放されてしまうほどの罪を犯した者同士なのに、その中にまだ優しさがあるなんておかしな話だわ。

 ミルとルビーの間に私ぐらいの子どもがいたのかもしれないけれど……。

 それにしてもさっきから妙な殺気を感じる。まぁ、誰からこの殺気が放たれているのかは分かっているのだけれど。

 ……あの坊主の男。私を疑っている。普通の人間なら感じ取れないような殺気を私に向けているのよね。静かにばれないように私を観察しているっていうのが正しいかしら。だって、彼私の方を向いていないもの。

「そうよ、貴方は生きるべきよ」

 弱々しい声で一点を見つめながらルビーが初めて言葉を発した。 

 あら、話せるのね。というか、ボーっとしながらも私の話を聞いていたんだ。

「どうして? 僕の命を僕がどう使おうと関係ないでしょ?」

「……私は、これ以上……あ、貴方みたいな子が死ぬのを……、見たくない」

「勘違いしているようだけど、僕は死ぬつもりなんてこれっぽっちもない」

 私の言葉に遂にミルが声を上げた。

「じゃあ、その体力も筋肉もない華奢な体でどうやってライオンと戦うんだ!」

 ……それは分からないわね。だってまだライオンに会っていないもの。どれくらいの大きさで、そのライオンもどれくらいの力を持っているかなんて全く知らない。

「勝算があるなら教えてくれよ」

 あったとしても言えないわよ。何か余計なことを言って、そこの坊主の男にこれ以上疑われたくないもの。

「うるさい! 静かにしろ!」

 牢の前に立っていた衛兵が私達に怒鳴る。その言葉でミルは口を閉じ、フッと力が抜けたように私から目を逸らす。

「さっきの眼鏡をかけた男の人と話がしたい」

 私は衛兵の言葉などに臆せず澄んだ声でしっかりとそう聞いた。

「あ? 眼鏡をかけた男? ……支配人のことか?」

 やっぱり支配人だったんだ。

 訝し気な目で衛兵は私をギッと睨む。

「一体あの人に何の用なんだ?」

「明日のライオンの対戦相手を僕にして欲しいんだ」

「は? お前頭おかしいだろ」

「とっとと、その支配人呼んできてよ」

「おい、ガキが調子乗ってんじゃねえぞ」

 柵から衛兵の手がグッと伸び、私の胸ぐらを勢いよく掴んだ。

 そんな風に引っ張たら服が伸びちゃうじゃない。さらしで胸元は巻いているから大丈夫だけれど、元々ボロボロだった服が余計に酷くなるわ。

 布越しでも彼が私を物凄い形相で睨んでいることは把握できる。

「一体何をしているんだ」

 少し遠くからあの眼鏡の声が聞こえた。

 あら、なんていいタイミングなのかしら! 彼に直接言えば、なんとかなりそうだわ。

「あ、支配人」

 衛兵は私からバッと手を離す。それと同時に、怒りのこもった低い声が響いた。

「何をしているんだ」

「こ、このガキが、明日の見世物を自分にしろとか言い出して……」

 さっきまでの威勢はどうしたのよ。支配人相手だとこんなに縮こまっちゃって。

 カツカツとこっちに歩いてくる足音が聞こえる。これでようやく支配人に認識してもらえる。

「このガキが?」

 私を見るなり、眼鏡の男は顔をしかめる。

「明日は、国王が来る日だ。こんな弱っちい奴を出すわけにはいかない」

 ……国王様が来る日と来ない日があるのね。まぁ、そんな暇じゃないものね。

 待って、この流れだと私は国王様が来ない日に見世物として出場させられるってこと? それはまずいわ。

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― 新着の感想 ―
布で目を覆ってるだけで多少ボヤけるけど見えてると言ってましたよ
[一言] 目が見えない設定のはずなのに支配人が眼鏡を掛けていること知ってる表現なのが気になりますね
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