表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

197/710

197

 眼鏡をかけた厳格そうな若い男の人がそこには立っていた。

 ……こっちの服装は少しスーツっぽい。カジュアルなのかフォーマルなのか分からなくなってきた。というか、よく考えてみたらこの乙女ゲームの世界観って凄いわよね。

「ここはどこなんだ?」

「ここはラヴァール国の闘技場の地下でございます」

 フィルの質問に男は即答した。

 どうして闘技場……? 皆の顔が引きつるのが分かった。

 ああ、そういうことね。私達は、国外追放された身だ。つまり、私達の命なんて軽いもの。この国の見世物になるってことかしら。

「そうですね、明日の朝に貴方に戦ってもらいましょう」

 男はそう言って薄気味悪い笑顔を浮かべながらフィルを指差した。

 フィルは散瞳し、ただ男の指を見つめて固まった。

 ちょっと待って、着いてすぐに戦うなんて体力もないし、死ぬに決まっているじゃない。相手は誰かによるけれど……。

「対戦相手は……、飢えたライオンなんてどうですか?」

 何を言っているの? ライオン? 何匹? どれぐらいの大きさ? 性別は?

 脳がぐるぐると周り整理が出来ない。いきなり突き付けられた現実に少し戸惑う。国外追放が甘いことじゃないくらい分かっていたけれど、これはかなりまずいかも……。

 もし、私がこんな格好じゃなかったら優遇されていたのかしら? いや、その前に、貴族とバレて違う馬車で送られていたかもね。

 まぁ、そんな手遅れな話を考えた所で意味ないのだけれど。

「明日の……朝?」

「安心してください。食事の方は満腹になるまで好きなだけ食べて良いですよ」

「ち、ちょっと、待ってくれ……。もう少し先に出来ないのか?」

「それは出来ませんね」

「……鍛えたり、こ、心の準備とか」

 怯える目でフィルはたどたどしく言葉を発する。

「それに、それにだな、俺はこの中では一番年上だ。だ、だから時間が、必要なんだ」 

 まるで、神にすがるように男にすがっている。

 それと対照的に男は酷く冷たい視線でフィルを見下す。

 彼に心がないというより、本当に私達を商売道具としてしか見ていないことを実感させられる。

「なぁ、頼む、少しだけ先に」

「罪人の分際で口出しするな。あんたらは捨てられたんだ。せめてライオンの餌になって役に立て」

 片手でフィルの口を力強く覆い、男がそう言った。

 鋭く突き刺さるようなその言葉にフィルの目は大きく見開き、少し涙目になっているのが分かった。

 ……本音が出たわね。それにしてもなかなか厳しいこと。これも悪女になる為の試練よね……。

 伝記にはライオンの餌になりかけたって書かれるのかしら。

 良いじゃない。上等よ。絶対にここで生き残ってやる。

 私は口の端を少し上げて、腹をくくった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 『これも悪女になる為の試練よね……。』 絶対に違うwwww
[一言] 世界観変わってて草 国外は別世界やなw
[良い点] wwwwwwww まーさーかーのーグラディエーター展開 なんか少年漫画みたいになってきたよ。大歓迎です 国外追放って、単に海外に強制連行されるだけだと思ってたのに、 思ったより厳しい罰な…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ