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ラヴァール国でどんな格好をしよう。
私は馬車に揺られながらそんなことをずっと考えていた。
世の中外見が全てだ。中身が大事と言われるが、第一印象はやはり外見。そこで大体全てが決まるのだ。それから中身を見られる。
出来れば、王族に近づきたい……。そうなると、この自慢の黄金の瞳が邪魔なんだよね。
この色の瞳を持っている人間に出会ったことがない。稀有な存在とか思われたら面倒だ。
出来る限り、目立たないようにしないといけないもの。そうなると、やっぱり両目を包帯で巻いておくとかした方が良いかな?
ウィルおじさんは両目無しで生活していたし、私も訓練すれば出来るようになるはず……。
それから、この少し成長した胸も押しつぶして、男に変身しよう。
今、髪は短いし、筋肉も日々鍛えてきたし、小柄な少年を演じようと思えば演じれる。
「よし、決まり」
即座に私は眼帯を外し、それをポケットの中にしまい、着ていたスカートを乱暴にちぎった。
ビリビリッという音が馬車の中で響く。
「ねぇ、最後のお願い聞いて欲しいのだけれど」
私は目に布を巻きながら、衛兵に声を掛けた。
「何でしょう?」
「ラヴァール国との国境に行く前に、私でも着れるような男の子のボロボロの服を手に入れることは可能?」
私の質問に少しの沈黙があった。こんなことを聞かれるとは思っていなかったのだろう。少し困惑している様子が分かる。
それに、目に布を巻いているけど、全く見えないってわけじゃない。少し視界が霞むだけで周りのことを把握出来る。
やっぱり私の目って特別よね? 本を読む速度とかも尋常じゃなかったし……。オークションとかに出したら破格の値段で落とされそう。けど、流石にこれ以上目がなくなったら困るからそんなことはしないけど。
「…………可能ですが、一体何に使われるのですか?」
「私が着るのよ。……あ、それと、炭と泥も少々欲しいわ」
「アリシア様が着るのですか?」
驚きと疑問が混ざった声で返答された。
衛兵は何を意図して私がこう言っているのかあまり分かっていないようだ。
まぁ、それもそうよね。いきなりそんなことを言ってくる令嬢なんてまずいない。いや、それ以前に国外追放される令嬢なんていないか。
「では、少し町に寄ってから国境に向かいます」
「有難う。あ、それと出来るだけ汚れている服にしてね」
「分かりました」
私の要望に戸惑いながらも衛兵は承諾してくれた。
流石デューク様の衛兵ね。結構無理だと思っていたことも通るみたい。




