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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
176/685

176 十五歳 ウィリアムズ家長女 アリシア

 エマに好かれるなんて絶対に嫌よ。これ以上、仲間が増えると悪女としての威厳がなくなってしまうわ。

 何とかして、彼女をリズさん側に戻さないと。ああ、もうまたやる事が増えてしまったわ。

 私は早くラヴァール国に行きたいのよ。エマに時間をかけている暇は無いのよね。

「アリちゃん、難しい顔をしてどうしたんだ?」

 羨ましいわ、カーティス様はいつもお気楽そうで。

「何にもないですわ。そんな事よりもデューク様はどちらに?」

「お? ついにアリちゃんがデュークを探すようになるとは! お兄さん、嬉しいよ」

「おっしゃっている意味がよく分からないわ……」

「確かにアリちゃんには分からないだろうね」

「今までデュークだけがアリシアの事見ていたからね」

「もし分かっていたらデュークにあんな事を言わないよ」

 ジルが止めを刺すように私にそう言った。

 ……そこまで言われるなんて。だって、本来はデューク様はヒロインに惚れているはずだもの。

 まさか悪女の私に惚れるとは思わなかったのよ。……駄目ね、言い訳はよくないわ。相手の気持ちを汲み取れなかった私の落ち度だもの。悪女になりたくても、最低な女にはなりたくないわ。

 けど、やっぱり気になるわ。一体私はどこで間違えてしまったのかしら。デューク様に好かれるような事をした覚えはないわよ。

 ……惚れるってどういう気持ちになるのかしら。惚れると好きになるは一緒の意味なのかしら。

 ああ、恋愛入門書ってないのかしら。誰か書いてくれないかしら。

「アリちゃん、一体何を考えているの?」

「こうなったら僕達の声は聞こえないよ」

「眉間に物凄く皺を寄せながら考えこんでいるんだから、よっぽど難しい事なんだろうね」

「それは違うと思うよ」

「どうして分かるんだ?」

「基本的にアリシアは難問を解いていても難しい表情は一切しない。この表情は恋愛関係の時だけだよ」

「「恋愛関係……?」」

「ああ、もう、分からないわ!」

 私は思わず心の叫びを声に出してしまった。

 ジルとカーティス様とフィン様が少し驚いた表情で私を眺めている。

「どうしたの?」

 カーティス様は目を見開きながら私にそう聞いた。

 この際、もうカーティス様に聞くしかなさそうだわ。恋愛のマニュアル本なんてないもの。

 恋多きカーティス様に頼るしかなさそうね。いや、そもそもカーティス様は本当の恋をしたことがあるのかしら。ほぼ遊びなのでは? いや、見た目で判断するのはよくないわね。

「……カーティス様は本気で誰かを好きになった事が」

「ないよ」

 私が質問し終わる前にカーティス様は穏やかな口調で静かに答えた。

 怒りは感じられないけど、何故か哀しみが感じられた。

 これは深く追求しない方がよさそうね。まぁ、誰にでも色々な事情があるものね。

 カーティス様ルートをクリアした覚えはあるんだけど、……何か複雑な事情があったかしら?

「俺から見れば、デューク様もアリちゃんも羨ましいよ」

「え?」

「一つ、俺から教えられる事は、……恋は理屈じゃないよ」

 柔らかな口調でカーティス様は私の目をじっと見ながらそう言った。

「陳腐な言葉だね」

 ジルの鋭い言葉でカーティス様の顔が少し引きつった。

「一瞬で空気を壊すな」

「折角格好つけたのに、カーティス可哀そう」

 フィン様が哀れみの目をカーティス様に向けている。

「思ってないだろ」

 カーティス様はフィン様を軽く睨みながらそう言った。

 恋がどうのこうのよりも、カーティス様が私とデューク様の事を羨ましいと言った言葉の方が気になるわ。何が羨ましいのかしら。

「アリシアとデュークのどこが羨ましいの?」

 ジルが少し真剣な口調でそう聞いた。

 あら、私の心を完全に読み取ってくれるなんて、有能過ぎない?

 私はそんな事を心の中で思いながら、視線をカーティス様の方へ向けた。

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