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「どうせ嘘でしょ、私があんたをはめたように私の事をはめようとしているんでしょ!」
エマは目を真っ赤にして、涙を数滴流しながら私に怒鳴った。
どうしてそんなに怒っているのかしら。もしかして、私が年上に対して敬語を使わなかったからとか?
「貴方に仕返ししても何の利益にもならないわ」
「ふざけないで! どうせ私をはめるに決まっているわ!」
「誰かにはめられたの?」
「……あんたに関係ないでしょ!」
私の言葉にエマは明らかに動揺した。
本当に誰かにはめられたみたいね。けど、エマはリズさん派なのに、どうして誰かにはめられるのかしら。
「そうね、関係ないわ。……けど、泣いたら負け、そう思って貴女みたいな気の強い人は基本的に泣くことを我慢するのよ。だから、たまには我慢せずに声を出して泣いてみてもいいと思うわよ。気が済むまでここにいたら?」
私はそれだけ言って、教室を出た。エマが私をどんな表情で見ていたのか分からないけど、何も言わなかったって事は私の案を受け入れたって事でいいわよね……。
私は指を軽く鳴らし、教室全体に壁を張った。壁を張る前に教室から嗚咽を上げながら泣き叫ぶ声が聞こえた。
……エマの事は特に興味もないけど、誰にはめられたのかしら。それは気になるわ。
「僕、思うんだけど……」
「何?」
「アリシアって、お人好しだよね」
「何言ってるのよ、お人好しっていうのはリズさんみたいな人の事を言うのよ」
私はジルの言葉に笑いながら答えた。ジルは少し呆れた表情で私を見ている。
「何よ、その顔は」
「別に何にもないよ、ただこの調子で行くと、聖女の立ち位置が……」
ジルが段々と声の調子を弱めていった。ジルがなんて言ったのか聞き取れなかった。
けど、どうせ聞いても教えてくれないだろうから、気になるけど、聞かないでおきましょ。
「デューク様を探すわよ」
私はそう言って、廊下を早足で歩き始めた。




