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いつも読んで頂き有難うございます!
本当に嬉しいです。
ペンネームを鸞から大木戸いずみに変えました。
よろしくお願いします。
確かに良い眼をしているわね。
ジェーンは薄紫色の髪の女子生徒を豪快に鼻で笑った。
「何言ってるの? あんたがこいつを好きだなんて言うからでしょ?」
……ジェーンの性格を壊してしまったのは私かもしれないわね。
けど、彼女の髪の毛が床に散らばるような事態になったのは私のせいじゃないわ。
ジェーンはハサミを彼女の方に向けた。今にも彼女を刺しそうな勢いだ。
あら、それは犯罪だわ。でも、この事態を彼女はどう対処するのかしら。
見てみたいわ。私は彼女の方に目を向けた。
葡萄色の瞳が大きく見開いていた。……威勢は良いが、刃物を向けられると弱くなるのね。
「……怯えた眼だわ」
「どうするの?」
「そんな目で見ないで。私に何か期待しても無駄よ。彼女は使えないわ」
私の言葉は思ったよりも食堂内に響いたようだ。
彼女の瞳が私の方に向けられた。初めて目が合った。酷く落胆する目だ……。
そんな目で見られても私にどうしろっていうのよ。私は悪女なのよ?
「彼女、アリシアに拒絶されて泣きそうだね」
「私は何もしないわよ」
「そう? それなら別にいいけど」
……何よ、その態度。いつから私をそんな試すような眼で見るようになったのかしら。
歳を重ねるにつれて生意気になっているような気がするわ。ジルのくせに……。
「もっと切って欲しい?」
ジェーンは高笑いしながらそう言った。
……目が犯罪者だわ。
薄紫色の髪の女子生徒は目に少し涙を浮かべながら後退っている。
さっきまでの勢いはどこに行ったのかしら。まぁ、あんな目でハサミを持って近付いて来られたらそうなるわよね。
というか、誰か止めてもいいのに、皆ただの傍観者なのね……。
そりゃそうよね、自分があんな目に遭いたくないもの。リズさんを崇拝しているのは自分の身を挺してまで誰かを助ける事なんて出来ないから。
それでよく人の事を言えるわね。自分の事を棚に上げて……。
なんだか腹が立ってきたわ。こんなにも人が沢山いるのに今の状況をただ見ているだけ?
ふざけないで欲しいわ。正義という言葉が大好きなのにそれを実行する者が一人もいないなんて呆れるわ。ただの無力なお嬢様お坊ちゃまの集まりじゃない。
「くそったれ」
私の言葉に一瞬で食堂が静まり返った。
五大貴族の令嬢がこんな言葉を使うなんて初めてじゃないかしら。これもきっと歴史に残るわね。
有言実行よ、口の悪い悪女になっているもの。
目を見開きながらジェーンは私の方を振り返った。薄紫色の髪の女子生徒も固まっている。私はじっと彼女の方を見つめた。
……そうね、あの状況でジェーンに言い返せた勇気は認めてあげるわ。
なんだかジルに流された気もするけど、しょうがないわ。
それにレベル90越えだってそろそろばれてもいいわよね。皆に知れ渡ったら、これからこんな面倒事には巻き込まれないだろうし。リズさんには敵わないけど、ジェーンには勝てるわ。
ジルが隣でにやにやしているのは無視しておきましょ。
「権力を行使するのはあまり好きじゃないけど……今私が貴方をここで殺しても私は無罪よ」
私の言葉にジェーンは少し怯んだ。
本当にこんな姑息な手を使うのは気が引けるけど、たまにはいいわよね。
「お忘れのようだけど、私は五大貴族ウィリアムズ家の長女よ。私に対する暴言は死に値するわ」
私は口角を軽く上げて、指を鳴らした。




