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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 朝日の眩しさで私は目が覚めた。

 そう言えば、昨日小屋に帰ってきてからすぐに眠ってしまったのよね。随分疲れていたみたいだわ。

 私はベッドから起き上がり、小さくため息をついた。

 結局ウィルおじさんに会えなかったし……全ての問題が解決するのは一体いつになるのかしら。

 なんだか頭が重いわ……。剣の素振りでもしようかしら。

 私は剣を掴み体を上に伸ばしながら小屋の外に出た。

「アリシア?」

 聞き覚えのある声が聞こえた。私は声が聞こえる方に目を向けた。

 ……ジルが私より先に起きて外にいるのは分かるわ。そして、そこにヘンリお兄様がいるのも分かる。

 問題はどうして彼がいるの? 

 いても不思議ではないのだろうけど……メンバー的におかしいわ。

「久しぶりだね」

 ポールさんは私に微笑んだ。

 癒し系のポールさんなのに、ジルとヘンリお兄様と一緒にいると何故か腹黒く見えてしまうわ。

「とっても綺麗になったね、アリシア。……目、大丈夫?」

 ポールさんは自分の左目を軽く指さしながらそう言った。

 久しぶりに会うはずなのに何故かいつも会っていたような感覚だわ。どこにでも溶け込める性質なのね。

「ええ、大丈夫ですわ。……どうしてポールさんがここに?」

 私の質問にヘンリお兄様は少し困った顔をした。

 ポールさんって植物屋で働いている以外に何かしていたかしら。貴族なのに植物屋の店主って事以外に何も設定はなかったはずよ。最近は本当に謎が増えていくばかりで一向に解決しないわね。

 そういえば、もうリズさんに会ったのかしら……。リズさんはポールさんからの好感度はかなり高いはずだわ。ああ、聞きたいことが山積みだわ。

「……いつジルとポールさんは知り合ったの?」

 私がそう言うと、ジルは小さく笑った。まるでいたずらがばれた少年みたいだ。

「ヘンリに紹介してもらったんだよ」

「いつの間にそんなに仲が良くなったのよ」

「そんな事よりもポールの話をアリシアも一緒に聞こうよ」

「その前に私がポールさんに聞きたい事があるのよ」

「何だい?」

 ポールさんは爽やかな笑顔を私に向けながらそう言った。

 爽やか過ぎて逆に怪しいわ。……前まではそんな事を思わなかったのに。

「リズさんに会ったことは?」

「ああ、あるよ」

 眼鏡越しに見える目を少し見開いてポールさんはそう言った。

「彼女に対しての第一印象は?」

「……可愛いし良い子だと思うよ」

 少し怪訝な表情をしながらポールさんはそう言った。

 ……その表情を浮かべてしまう気持ちは分かるわ。いきなり事情聴取みたいな展開になっているものね。

「アリ、ポールは俺たちに情報をくれてるんだ」

 ヘンリお兄様が私の質問を遮るようにそう言った。

「情報?」

「そうだ」

 ヘンリお兄様はそう言って頷いた。

 情報屋……が副業なのかしら? それとも植物屋が副業かしら。

「ジルは学園内での事はヘンリお兄様から聞き、町で起こっている事はポールさんから聞き、貧困村には自分の足で行き、全ての情報を把握していたってわけね」 

 私がそう言うと、ジルは誇らしげに口元を軽く上げた。

 ……なんて子なのかしら。私の手に負えないわ。凄いの一言ね。

 まぁ、勿論、声に出して褒める事なんてしないけどね。

「貧困村?」

 ポールさんは目を見開いて固まっている。

 ……そうだったわ、私の周りにいる人達は私が貧困村に行っている事を知っているから、その調子でつい話してしまったわ。

 という事は、ポールさんはジルが貧困村出身だって知らないのかしら。

「昔、ポールさんから頂いたジョザイアはジルの病気を治すために使ったの」

「え?」

 私の言葉にポールさんではなくジルが声を上げた。

 ああ、そうだわ、ジルも自分の病気を治したのがポールさんの店の薬草とは知らなかったものね。

 なんだか、数年越しのドッキリ大成功みたいな展開だわ。

「僕らはその時から繋がっていたみたいだな」

 そう言ってポールさんはいつもの癒しの笑顔を浮かべた。

 同じ癒し系でもリズさんよりもポールさんの笑顔の方が好きだわ。

「まさか、五大貴族の令嬢が貧困村に行っていたなんて驚きだな」

「ええ、よく驚かれますわ。もう慣れましたけど」

 私の言葉にポールさんは苦笑した。

「ジルは……貧困村の子なんだな」

 ポールさんはジルをじっと見つめながら静かにそう言った。

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