表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
15/634

15

「恩を売る……?」

 エリック様が私の言葉の意味が理解できないといった顔をして呟いた。

 アルバートお兄様、ゲイル様、デューク様、国王様は私の言った事の意味を理解したように見えた。

 流石、賢い人達は頭の回転も速いのね。

「カルベラ国の税源は金です。そのカルベラ国に恩を売り、貿易するとなればこの国が有利になるという事です。その金でより経済を潤し、貧富差を小さくすればいいのです」

 恩を売ればこちらが有利になるって考えは聖女様は絶対に思いつかないわ。

 ヒロインも聖女様寄りだから、このままいけば私とヒロインの間に必ず軋轢が生じる。

 今、私は最高の悪役令嬢の軌道に乗っているわ。

「成程」

 国王様は何故か期待に満ちた目で私を見ている。なんですかその目は。

「つまり、その話には慈悲は一切、」

「ないですわ」

 国王様が言う前に私が言った。

 ニッコリと笑って、きっぱりと言った。悪女に慈悲なんて少しもないわ。

 全て自分の利益のために行動するのよ。

「話が出来てとても楽しかった」

 国王様はそう言って優しく笑い、腰を上げた。

「私も国王陛下とお話ができて楽しかったです」

 私は軽くお辞儀をした。自分で言うのもなんだけど、お辞儀には自信があるの。

 ちょっと前までは本当に最低限のマナーしか知らなかったけど、それじゃこれからの悪女としてまずいと思って必死に勉強したのよ。

 お辞儀が綺麗でないと馬鹿にされるもの。悪女はちょっとした仕草が命なのよ。

 馬鹿にされている悪女なんて一番嫌よ。

 国王様が部屋から退出なさった後、私は安堵のため息をついた。

 ああ、心臓に悪かったわ。

 私の悪女っぷりは合格点を余裕で越えているんじゃないの?

「緊張したか?」

 デューク様が私を優しい表情で見てそう言った。

 やっぱり親子ね、国王様の面影があるわ。美形親子ね。

 確かゲームではアリシアはかなりデューク様に嫌われていたような……。

 優しい言葉も優しい表情も全部ヒロインに向けられていたわよね。

 これからの展開で変わってくるのかしら。

「はい」

 私は苦笑交じりで返答したがすぐに後悔した。

 悪女はいかなる時も動じないのよ。という事は緊張なんかしないはず。

 それに苦笑なんてしない。笑う時は思い切り笑うのよ。

 またやってしまった。何故か私はいつも最後の最後で気が緩んでしまう。

 今日もプラマイゼロね。やっぱり悪女への道のりは長いわ。

 それにしても本当に国王様は私を見定めに来ただけみたい。

 けどなんでわざわざフィン様のお屋敷なのかしら。まぁ、そこは気にしなくていいか。

「疲れたでしょ~? 裏の庭でお茶会やってるから今から行こっ!」

 フィン様はキラキラ笑顔で私の手を引っ張る。

 私はフィン様にそのまま連れられて裏の庭に来た。

 ……嘘。私の大好きなお菓子が沢山並べられている。見ているだけでよだれが垂れてきそう。

 甘い香りが私を誘っている。……これは食べてもいいって事?

 フィン様は私の心の中を読み取ったのか笑顔で、お好きなだけどうぞ、と言ってくれた。

 そんな事を言われたら喜んでお言葉に甘えます。

 私は大量のクッキーやケーキを手に取った。さっきフルで頭を回転させたから糖分不足だったのよ。

 それにほっぺたが落ちちゃうほど美味しい! いくらでも食べられる。

 はしたないのは分かっていても食べ物の誘惑には敵わないわ。

 私は周りの目を気にせずお菓子をどんどん口に運ぶ。

 最高に幸せだわ。今日のメインはこれだったのよね? 今日の国王様とのお話はおまけよね?

 それにお菓子を沢山頬張る私はもしかしたら周りからは欲望にまみれた女だと思われているかもしれないわ。これぞ悪女! 悪女は欲望にまみれておかないとね。

 お茶会って最高だわ。一石二鳥ってまさにこの事を言うのね。

 私は無意識のうちに口元が緩んでいた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 国王の言葉を遮ったぞ! あ、悪女だ!
[一言] なんだこの飴と鞭ならぬ、飴と圧迫面接みたいなの
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ