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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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「アリ、また大変な事になってるぞ」

 ヘンリお兄様は慌てた様子で私達の元へ来た。

 そんなに慌ててどうしたのかしら。私、また自分の知らない所で何かやらかしたの?

「どうしたのですか?」

「アリ……リズの悪口を言ったか?」

 ヘンリお兄様は真剣な目で私を見ながらそう言った。

 悪口? そんなの言った覚えないわね……。

「あいつらじゃない?」

 さっきまで目を輝かせて話していたジルの瞳が一瞬で暗くなった。

 私はジルのその一言で察した。

 ああ、またはめられたんだわ。この学園で生き残るのがこんなに大変だなんて。

 私は小さくため息をついてヘンリお兄様の方を見ながら口を開いた。

「私、リズさんの悪口は言ってないけど、リズさんの悪口を言っていた人には遭遇したわ」

 私の言葉を皆は一瞬で理解してくれた。

 私を信用してくれているからこそ理解してくれるのよね。有難いわ。

 リズさん信者達は私が何を言ってもきっと理解してくれないもの。

「とりあえず、リズの元に向かうか」

 デューク様の言葉に私達は頷いた。

「キャザー・リズはどこにいるの?」

「教室だ」

「メルもついて行くね~」

 メルは明るい口調でそう言った。

 ……目が殺し屋みたいだわ。本当にリズさんの事が嫌いなのね。

 私達は黒板に書いた物を乱雑に消してそのままリズさんのいる教室へ向かった。

 

 私って休む暇もなく次々と何かに巻き込まれていくわよね。

 私はそんな事を思いながらリズさんのいる教室に入った。

「あ、来ましたわよ!」

 私をずっと待っていたかのようにある女子生徒が声を上げた。

「来てあげたわよ」

 私は笑顔でその女子生徒にそう言った。

「なんなのその態度!」

 女子生徒は声を張り上げていたが私は無視してリズさんの元へ向かった。

 リズさんの周りにはやっぱり今朝、私に話しかけてきた人達がいた。

 勿論、いつものメンバーのお兄様達もいる。カーティス様とフィン様は不在だけど。ちゃらい男にあざとい少年……まぁ、いてもいなくてもどっちでもいいわね。二人とも何を考えているのかあんまり分からないし。

 毎日、こんなに軽蔑された目で見られると慣れるものね。私的にはもっと怒りに満ちた目で見て欲しいんだけど。やっぱり悪女は存在するだけで人に怒りを与えないとね。

「今度は一体何があったのですか?」

 私は満面の笑みでリズさんに聞いた。

「何って彼女達がアリシアちゃんが私の悪口を言っていたって言うのよ」

 リズさんは特に私に敵対心を見せずにそう言った。

 流石聖女だわ。普通なら私が現れた瞬間、嫌な顔をするはずなのに、平然としているんだもの。

「で、リズさんはどう思っているの?」

 私がそう聞くと、リズさんは少し考え込んだ。

「証拠がないから私は貴方に何も言えないわ。だから、私はアリシアちゃんに直接聞くわ。……アリシアちゃんは私の悪口を言っていたの?」

 エメラルドグリーン色の双眸が私をじっと見つめる。

 噂を鵜呑みにしない所は素晴らしいわね。

「……言っていないわよ」

「そう。私、貴方の言葉を信じるわ」

 リズさんは私に微笑む。

 ……天使の微笑みを久しぶりに見たわ。

 どうしてかしら、その笑顔を見ると全身が痒くなってくるわ。

 本当はここは感動するところなんだけど、無理だわ。

「リズ様!? どうしてこんな奴の事を信じるのですか?」

「彼女はリズ様の悪口を言っていたんですよ?」

「そうですわ! 男好きとか、調子に乗っているとか言っていましたわ!」

 リズさんの周りにいる女子生徒達は次々とそう声を上げ始めた。

 こんな奴って……酷い言われようね。こんな悪女って言って欲しいわ。

 リズさんの表情が少しずつ曇っていく。人間不信になりそうだわ。

 生徒達の私を見る目が段々鋭くなっていく。まぁ、ほとんどの生徒がリズさん信者だからしょうがないわね。私が嘘をついたって思いたくなる気持ちも分からなくはないわ。

 ジルはメルの方をちらりと見た。メルは小さく首を横に振った。

 きっと、今朝は私達の様子を見ていなかったんだろう。

 今、私は魔法を使えないし、自分が無実だという事を証明できないわ。

「あのさ、その悪口を言っていたのは君達じゃない?」

 どこからか急に少年の可愛らしい声が聞こえた。

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