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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 ああ、早く魔法を使えるようになりたいわ。

 普段の生活で魔法を使う事なんてほとんどないけど……。それでもやっぱり使えないって不安な気持ちになるのよね。……悪女が不安な気持ちになるなんてだめだわ。常に自信に満ち溢れて堂々としておかないと。

 馬車の中でそんな事をぼんやりと考えながら外の景色を眺めていた。

 もうすぐ魔法学園につくわね。

 リズさんに会って自分の悪女っぷりを自覚出来る事が最近の幸せだわ。

 

「アリシア様、あの私達、アリシア様の事が凄く好きで」

 学園に入り、校舎に向かっていたらいきなり声を掛けられた。

 ……また面倒くさそうな事に巻き込まれそうだわ。

 ジルも同じ考えをしていたみたいで私は無視してそのまま校舎の方へ足を進めた。

「私達、リズさんが嫌いなのですわ」

「本当にうざくて、自分が可愛いからって調子乗っているんですわ」

「平民のくせに生徒会に入るなんて本当に何様なの」

「いつも生徒会の皆様といて……男好きなんじゃないのかしら」

 私は彼女達の言葉に違和感を覚えて、ゆっくり彼女達の方を見た。

 身に着けているものからして結構身分の高い人達ね……。八つの目が私をじっと見ている。

「アリシア様もそう思いますわよね?」

 意気込んだ様子で淡いオレンジ色の髪の女子生徒がそう言った。

 私に同意を求められても困るわ。私は眉をひそめながらその女子生徒を見た。

「生徒会に入れたのは彼女が賢かったからでしょ?」

 私の言葉に四人とも目を見開いた。 

 私、別にリズさんとは考えが合わなくて苦手なだけでうざいとは思っていないのよね。

 逆にリズさんがいないと私の悪女さが際立たないから、彼女は私の悪女計画の中で必要不可欠な存在なのよ。

「でっでも、彼女は特別な能力があるから生徒会に入れたのですわ」

「そうよ! それにいつもいい子ぶっちゃって目障りだわ!」

「平民の彼女がこの学園にいる事が私は許せないわ」

「ちょっと可愛いからってちやほやされちゃって、本当に鬱陶しいわ」

 次々とリズさんの悪口を女子生徒は言い始めた。

 ……これが本音なのか私をはめる罠なのか分からないけど、本当にくだらないわ。

 今、彼女達に割いている時間がもったいないわ。

「文句を言うなら直接本人に言って来たらどうなの? そんな悪口を言っている暇があるのなら自分磨きに時間を費やせばいいじゃない。彼女は稀有な存在だから確かに生徒会に入れたのかもしれないけど、他の人達は別にそんな特別な能力なんてないでしょ」

 私は吐き捨てるようにそう言った。

 私に睨まれた事に怯えたのか一人の女子生徒が身震いした。

 やっぱり人気者を嫌う人は絶対に出てくるものよね。リズさんが物凄い不細工だったりしたら少し話は違っていたのかもしれないけど。

 茫然と私を見つめる彼女達を無視して、そのまま校舎の方に歩き出した。

 ……そうだわ、一つだけ言い忘れていたわ。

 私は少し歩き出したところでゆっくり振り返り、彼女達を見た。

「私の隣にいる彼も貴族じゃないわよ。けど、貴方達より賢いわよ。私は実力主義なの。馬鹿な貴族よりも賢い平民の方が私は好きよ」

 私は軽く口の端を上げてそう言った。

 彼女達は私の表情に怯み、そのまま後退り、走って逃げて行った。

 あら、私の悪女ポイントが加点されたわ。微笑んだだけで逃げられるなんて。

「アリシア、口元が緩んでるよ」

 ジルが少し呆れたようにそう言った。

 私はすぐに無の顔を作った。すぐに気が抜けてしまうのが私の良くない所ね。

 この学園にいる間は常に気を引き締めておかないと。誰に見られているか分からないんだから。

「それと、僕、アリシアが好きだよ。恋愛的な意味じゃないけど……。僕はアリシアの為ならこの命をいつでも捧げられるよ」

 ジルは真面目な顔でそう言った。

 私は目を見開いてジルを見た。突然の言葉に言葉を失うってこういう事を言うんだわ。

 ……私は悪女だから、そんな事を思わないで、自分の命を大切にしなさいなんて事は言わないわ。

 彼の命なんだもの、彼の意思に私は何も言えないわ。命の価値観なんて人それぞれなんだもの……。

 命をどう使うかなんて私が指図出来る事じゃないわ。私は道徳的にものを考えるのが苦手なのよね。

「有難う。私も死ぬような危機がないように生きるわ」

 私はそう言ってジルの頭を撫でた。

「本当にアリシアって行動が男前なんだよね……。でも、死ぬならアリシアと同じぐらい賢くなってからがいいな」

「……ジルはもう私より賢いんじゃない?」

「それはないでしょ」

 ジルは苦笑いでそう言った。

 ……でも本当にそう思うのよね。ジルの広範な知識に深い洞察力は私より間違いなく優れているわ。

 私達はそれから特に言葉を交わさずにそのまま校舎に向かった。

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