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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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 ウィルおじさんは特に驚いた表情もせずに私の目を真剣な眼差しで見ながら頷いた。

「……それで王宮から追い出されたのですか?」

「いや、そうではない。ただ弟と話が合わなかったのだ」

 ウィルおじさんはそう言って寂しそうに笑った。

「国王と話が合わなかった?」

 ジルが眉をひそめながらそう言った。

 ジルって本当に国王様が嫌いなのよね。

 私も幼い頃は国王様にそれなりに威厳を感じていて好きだったんだけど……。

「わしの面白くない昔話でも話すとするか」

 ウィルおじさんは遠くを見つめながらそう言った。

「ここで話してもいいの?」

 レベッカが心配そうにウィルおじさんにそう言った。

 確かに私達の周りには人が沢山いる。……でも、最初に見た時とは全く目が違う。前よりも希望に満ち溢れているように見える。そして、皆がウィルおじさんを慕っているんだと瞳を見れば分かる。

「聞かれて困るものじゃないからな」

 ウィルおじさんはそう言って微笑んだ。

「異母兄弟なんじゃ。わしとルークは」

 ウィルおじさんの声が静寂の中に響き渡った。

 衝撃と言えば衝撃だけど、確かに国王様とウィルおじさんはかなり歳が離れていたから、驚くような事ではないのかもしれない。

 それよりも今まで国王様にお兄様がいたなんて話を聞いた事がなかった事に驚きだわ。

 小さな噂一つ聞いた事がなかったんだもの。どうやって隠し通してきたのかしら。

「わしを産んで母はすぐに亡くなった。だが、そのわしが魔法を使えなくなったのだ。この国を担う天才と言われた少年が一気に役立たずになったのだ」

「それで前国王は再婚したの?」

 ジルが静かにそう聞くと、ウィルおじさんは小さく首を横に振った。

「いや、再婚はしていない。妾との間に子供を新しく作っただけじゃ」

「待ってください。妾がいたのですか?」

 私は思わず声を上げてしまった。

 ……妾を囲うのはこの国では禁止されているわ。

「だらしない父親だったんじゃ」

 そう言って微かに笑ったウィルおじさんはどこか寂しそうに見えた。

 確かに国王には魔法が使えないとなれないけど、だからと言って妾との間に子供を作るなんて。

「でも妾との子って周囲は」

「しょうがなかったんじゃ。わしは魔法が使えなくなってしまって、次期国王がいなくなってしまったのだから」

 ジルの言葉を遮るようにしてウィルおじさんはそう言った。

 私は胸が痛くなった。……一体どんな思いだったのかしら。天才と周囲に崇められ、魔法が使えなくなり、国王の座を父親の妾との子供に譲る事になるなんて、きっと胸が張り裂ける思いだっただろう。

 どうして今こんなに穏やかで他人に優しく出来るのかしら。

「わしは国王を支える事が仕事だと父親に言われて、誰よりも賢くなろうと日々勉学に励んだ。わしがかつて天才だと言われた理由は思考力が誰よりも卓越していたからじゃ……まぁ、そう思いたかっただけかもしれんがな」

 そう言って目尻に皺を寄せて私達に微笑んだ。

 ジルは眉間に皺を寄せて苦しそうな顔をしている。ジルだけではなく、この話を聞いている人達全員が苦しそうな表情を浮かべている。いかにここでウィルおじさんが慕われているのかがよく分かるわ。

「……ルークは十七歳で国王になり、わしはその時二十八歳だった。あの頃はほとんどわしが国王の仕事をしていたんじゃ……。この村も今ほど酷い状態じゃなかった」

 ウィルおじさんは少し顔をしかめながらそう言った。

 だから昔、貧困村について本を読んだ時、今と全く違う描写で書かれていたんだわ。

 貧困村がどんどん悲惨な状態になったのってウィルおじさんが王宮から追い出されてからって事よね。

 それにしても十七歳って随分若いわね……。国を背負うには未熟過ぎるわ。

「そして、ある日を境にわしとルークの仲が壊れてしまったんじゃ」

 そう言ったウィルおじさんの瞳は過去に戻る事が出来るならあの日をやり直したいと私達に訴えているように見えた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 予想は大体あってたけど、弟じゃなくて兄だった 弟の方が権力あったから追放できたのね
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