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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ


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「ねぇ、ジル、リズさんって自分と他者の区別を出来ているのかしら」

 私は人気のない長い廊下を歩きながらそう言った。

「さあね」

 私の話よりもジルは今読んでいる本に夢中になっている。

 ちょっとぐらい私の話を聞いてくれてもいいのに……。可愛げがなくなったわね。

 というか、歩きながら本を読むのは危ないからやめた方が良いわよ。

 私がそう言おうとした瞬間にいきなり体がふわっと浮かんだ。

「へ?」

 いつの間にか私の腰には逞しい腕が回っている。片腕で私を持ち上げるなんてどんな筋肉しているのよ。

「やっぱり細いな」

 後ろから甘く透き通った声が私の耳に響く。

 耳元で囁かないで欲しいわ。

 顔は見えないが、逞しい背中は視界に入る。

「離してください」

「逃げるだろ?」

 ああ、後ろから話しかけないで欲しいわ。色気の増したデューク様を相手するのは難しいのよ。

 初めて会った時のまだ少しだけ少年っぽさが残っている時に戻ってくれないかしら。

「ジル、アリシアを少し借りるぞ」

「どうぞ」

 ジルっ! まさか裏切るなんて! 二年間で本当に全く可愛げがなくなったわね。

 せめて本から目を離して欲しいわ。私より本が大事なの?

 それとも、デューク様を信用しているからかしら……。

「ジルの承諾も得られたし行くぞ」

「どこに!?」

 デューク様はそう言って私をすぐ横にある小部屋に連れ込んだ。あまりの強引さに声もでない。

 机が一つに椅子が四つの本当に何にもない部屋。ここで何をするのかしら……。

 というか、デューク様……本当に前のキャラに戻ってくれないかしら。

 デューク様と絡む時の体力の消耗の仕方が半端じゃないのよ。

 デューク様が私が出て行かないように腕を組みながら扉にもたれて、立っている。

 どうしてそんなに偉そうなのよ。

「何か?」

 私は軽く睨みながらそう言った。

「話があるのはアリシアの方なんじゃないか?」

「え?」

「昨日、何か俺に言いたそうにしていただろ」

 デューク様は私を見透かすように見つめる。

 嘘でしょ、どうして分かったのかしら。……出来るだけ気持ちは表情に出さないようにしているのに。

「で、何だったんだ?」

「えっと……聞きたい事が結構多くて」

「それは楽しみだな」

 私が少し躊躇っていると意地悪そうにデューク様が微笑んだ。

 ……本当に嫌だわ、この人。

 私は軽くため息をついた。

 とりあえず、何から話せばいいのかしら。ウィルおじいさんの話はジルがいた時の方がいいけど……そのジルが私じゃなくて本を取ったのよね。今は多分本に夢中だから邪魔しない方がいいし。

 なら、私の悪口を言った人達をどんな風に殺したのか気になるわ。

 結局分からなかったのよね。……実際ヘンリお兄様はデューク様が殺している所を見たのかしら。

「あの……」

「殺してないぞ」

 私が聞く前にデューク様は真剣な瞳でそう言った。

 ……デューク様は私の脳を見るコンタクトレンズでもつけているのかしら。

 というか、今殺してないって言ったわよね? 

 私は目を瞠ったままデューク様を見つめた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 漫画から来てここまで一気に読みました!原作の方が面白いです。 登場人物の描写が丁寧で、アリシアちゃんがどう思ってたかがよくわかります。 [気になる点] 聖女様って境界性パーソナリティ障害な…
[良い点] おおう、さすがに殺人は噂どまりの捏造か まあ、ヘンリの殺した犯罪者予備軍ならともかく、 悪口言っただけで殺害はちょっと大げさだもんな
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