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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 なんてタイミングの悪い男なのよ!

 私は心の中で叫んだ。

「ヘンリお兄様、なんておっしゃったのですか?」

「だからレベル90は」

「レベルさんというお方が九十歳になったのですか? それは凄いですわ」

 ジルが目を見開いてそれはないだろうという顔で私を見る。 

 分かっているわよ。かなり無理があるって事ぐらい。

 咄嗟に誤魔化す方法なんて思いつかないじゃない。

「おいアリ、わざとだろ」

 ヘンリお兄様が私を睨みながらそう言った。

 やっぱり無理ですよね。誤魔化せないわよね。

「ダカラレベルさんに私も是非会ってみたいですわ」

 私は無理やり笑顔を作ってそう言った。

「ダメだったのか?」

「あ、デュークだ」

「ジル、流石にそんな手には引っかからないぞ」

「本当に来ているんだって」

 ジルは少し声を張りながら私の後ろを指差した。

 ヘンリお兄様がそっとジルの指差している方に目を向ける。勿論、私を逃がさないように私の腕を掴んだまま。

「本当だ」

 ヘンリお兄様が目を少し見開いてそう言った。

 私もゆっくり振り返る。……本当だわ。デューク様が私達の方に向かって歩いてきている。

 デューク様に聞きたい事が山ほどあるのに、ヘンリお兄様がいたら聞けないじゃない!

 ああ、もう! 最悪だわ!

 こうなったら……最後の手段よ。

 私はヘンリお兄様の足を思いっきり力を込めて踏んだ。良い子は真似しないでね、と心で呟きながら。

 ヘンリお兄様は顔をしかめて私の腕を掴んでいた手をはなして蹲った。

 多分、私、ヒールだから相当痛いはずよね。

「ジル! 行くわよ!」

 私はジルに向かって叫び走り出した。

 ジルも慌てて走り出す。

「ジル! もっと速く!」

 ジルは本を抱えているから走りがのろい。それに普段鍛えている私と比べてジルは全く体力がない。

「アリ! 待てって!」

 ヘンリお兄様の叫び声が後ろの方から聞こえる。

 デューク様の笑い声も微かに聞こえた気がした。

 私はジルの側に駆け寄って抱きかかえた。そしてそのまま肩に担いで走った。こっちの方が断然速いわ!

 周りの視線なんか今は気にしている場合じゃないわ。

 今はとにかくこの場から離れないと!

「ちょっとアリ? 降ろしてよ!」

「じっとしてて! 捕まったらそこで終わりなのよ!」

「一応貴族なんだよ? 自覚して!」

「大丈夫よ!」

「……信じられない」

 ジルの深いため息が聞こえた。

 私はジルを抱えたまま魔法学園を出た。

 傍から見たら小さい子を攫った誘拐犯みたいになっているわよね。

 今の行動は悪女としてポイント減点されるから……今日の悪女ポイントはプラマイゼロって事かしら。

 私はヘンリお兄様が追っかけてきていないのを確認してからジルを地面に降ろした。

「歩いて家に帰るの?」

「そういう事になるわね」

「アリシアって……馬鹿なの?」

 ジルが呆れを越してまるで何かを諦めたような表情で私を見る。

「どうして? あそこから立ち去る策を考えれたんだからむしろ賢いって言って欲しいわ」

「家に帰ってもアーノルドに見つかったら終わりじゃん」

「だから、一週間小屋で生活すればいいんじゃない?」

「大丈夫なの?」

「小屋には鍵を掛けれるし、大丈夫よ! これに作戦名をつけるなら……こっそり生活作戦!」

「ださっ!……やっぱり小屋で二年間も一人だったから頭のねじが何個かとれたんだろうね」

 なかなか毒舌。

 確かに作戦名はださいけど、なかなかいい案よ。小屋にはちゃんとお風呂もあるし……。

 ていうか、これが一番安全でシンプルな案だわ。むしろこれ以外に他に作戦が思い浮かばないもの。

 シンプルイズベストよ。

「僕、なんだか疲れたよ」

「私もよ」

「家に着くのは」

「それは考えないでおきましょ」

 私達は少しずつ会話を挟みながら家まで自分達の足で帰った。

Twitter始めたので良ければ見てください。@___r__a__n

次話更新のお知らせ等載せております。

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― 新着の感想 ―
アリシアー!(笑) ヘンリ…痛そう…。がんばえー٩(′д‵)۶
[一言] 魔法が戻ってレベル確認してから学校くればいいのに。 一週間先延ばしになっても誰も何も言わんでしょ。
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