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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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12 八歳 ウィリアムズ家長女 アリシア

現在八歳 ウィリアムズ家長女 アリシア


「アリシア、今からスミス家に行くけど一緒にくるか? ヘンリもアル兄も行くけど」

 アランお兄様が庭で剣を振り回している私の元に来てそう言った。

 スミス家って、たしかフィン様のお家よね。

 行ってみたいわ! ここ最近、全く出かける事なんてしていなくてつまらなかったのよ。

「行きます! 今すぐ準備しますわ」

 私は急いで自分の部屋に行き、お出かけ用のドレスに着替えた。

 前世の記憶を思い出すまでの私は派手なドレスが好きだったのだけど、今はシンプルなのが好きなのよね。

 八歳でシンプルなドレスを着こなすなんてなかなかじゃない?

 まぁ、前世はちょっととはいえどもファッション関係の高校に行っていたから、それなりにセンスは良い方だと思うわ。

 私は少し明るめの黄色のシフォンドレスに同じ色の石のイヤリングを耳につけた。

 アリシアって顔が整っているからなんでも似合うわね。

 髪は括れる長さでもないから特にいじる必要はないわね。

 このストレートのさらさらの黒髪をゲームの中でのアリシアはよく自慢していた。

 まぁ、分からなくもないわ。実際物凄くさらさらなんだもの。

 私は右側の髪の毛を耳にかけた。

 なんだか八歳に見えないわね。随分と大人っぽく見えるわ。

 なんていうか……、まさに悪役令嬢って感じがするわ。

 私は鏡の前で自分を見てうっとりした。服だけでこんなに悪女っぽく見えるものなのね。

 これからファッションにも力を入れましょ。

「アリシア~」

 アランお兄様の声が聞こえた。

 私は急いで玄関の方へ向かった。


 私達は馬車でスミス家に向かった。

 正直馬車って苦手なのよね。長時間乗っているとお尻が痛くなるもの。

 私、乗馬をしたいわ! ……そう言えば、昔すぐに飽きてやめちゃったんだったわ。

 でも感覚って体に染みついているものよね?

 やってみたらなんとかなるんじゃないかしら。帰ったら乗馬の練習をしてみましょ。

 

 それにしてもこの国の景色はどこを見ても絵になるわね。ああ、この世界にもカメラがあればな……。

「アリ? どうしたんだ?」

 アルバートお兄様が心配そうに私の顔を覗く。

 あら、私としたことが浮かない顔を表に出してしまったみたいだわ。

 こういう時にもきっと悪女は酷い台詞を沢山思いつくのよね。

 何か私も言えないかしら。

 ……何も思いつかないわ。悪女への道もまだまだね。

 私は笑って適当に誤魔化しておいた。曖昧な笑顔って便利だわ。

「それにしてもアリは本当に変わったな」

 アランお兄様が私の方をまじまじと見ながらそう言った。

「どこか変わりました?」

「「うん、だいぶ」」

 アランお兄様とヘンリお兄様の声が見事に重なる。

 私、そんなに変わったのかしら。確かに前世の記憶を思い出す前のアリシアは随分と酷かったわ。

 悪役令嬢なのに悪女になるための努力を全くしていなかったんだもの。

 本当にあんなので悪役令嬢になれたのかしら。前世の記憶が戻っていなかったらどうなっていたのかしら。想像しただけで恐ろしいわ。

 アルバートお兄様が少し真剣な顔で私を見つめた。

「今更だけどどうしてそんなに……、真面目になったんだ?」

「真面目?」

 私は首を傾げた。私真面目なの? 傍から見たら真面目なの!?

 どうしましょ……。確かに、悪女は真面目だけど、それを周囲には分からないようにしているのよ。

「真面目なんかじゃないですわ。ただ自分がしなければいけない最低限の事をしているだけです。」

 誤解を解くために私はニッコリと笑顔を作ってそう言っておいた。

 アルバートお兄様は少し驚いた顔をしたけど、そうか、と呟いて優しく微笑んでくれた。

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